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【元介護士が伝えます!】介護リフトはなぜ普及しづらいのか
2021.9.02

皆様、こんにちは。

トランスファーサポートチーム営業の山下です。

突然ですが、皆さんは介護リフトを使っていますか?

介護リフトを「知っている」という方は多いかと思います。ですが、「使っている」となるといかがでしょうか。

積極的に介護リフト等の福祉機器を導入し、有効活用している介護施設がある一方、様々な考えや先入観から福祉機器の導入に二の足を踏んでいる介護施設もまだまだ多くあるかと思います。

なぜ、介護リフトがあまり普及しないのでしょうか。

今回は、過去に介護施設の介護士として働いていた私が、個人的に感じた「介護リフトが普及しづらい原因」についてお伝えしたいと思います。

「人の手でやる」ことが「介護」?

「介護は人を相手にする仕事。利用者様は認知症等の様々な疾病があるけれど、私達と同じ人間だから人として向き合って対応していこうね。」

私が介護施設で働きだした頃、先輩介護スタッフに言われた言葉です。「介護」は「利用者様の生活を支える仕事」です。そのため、生活していく上で必要な食事や排泄、入浴等、利用者様と身体動作に直接関わる介助が主な業務となっています。人を相手にする仕事であるからこそ、人の心の繋がりや人の温もりを大切にする風潮があります。それが介護士という仕事のやりがいにも繋がっていきます。ですが、人間の身体には限界があるかと思います。介護スタッフは年齢や性別だけでなく、体格や介護技術が異なります。それは利用者様にも同様で小柄な女性がいれば、大柄な男性も入所されています。特に移乗の場面においてはその差が顕著に現れると思います。

前職の介護士時代、華奢な女性の先輩介護スタッフがいました。その介護スタッフは利用者様との接し方はお手本のような方で、利用者様から絶大な信頼を寄せられていました。ある時、大柄な男性利用者様を全身の力を目一杯使って、抱えるように車椅子へ移乗しているシーンを見かけたことがありました。その介護スタッフは移乗介助の後、「ふぅ」と一息つき、腰を手でポンポンと叩いていました。このようなことをしたことがある、見たことがあるという方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。ひと昔前まではこのような移乗介助が当たり前になっていたと思います。その根底には利用者様と直接関わる介助だから「人の手でやる」という前提があったからです。現代でも「人の手でやる」ということを大切にし、全ての介助に当てはめている施設はまだ多く存在しています。

「機械(介護リフト)を使う介助」が「人の手でやる」ことではないと捉えてしまっていることが、日本で介護リフトがあまり普及しない原因のひとつだと私は思います。「介護技術」と聞くと、ボディメカニクス等を活用した身体介助が頭に浮かぶ方がいるかと思います。ですが、ベッドや車椅子が介護に欠かせないように、福祉用具を適切に使うことも介護技術のひとつではないでしょうか。

介護リフトを使うのは難しい?時間がかかる?

前回の記事でお伝えしたとおり、私が介護士としてリフト導入に直面した8年前、リフトに対して否定的になってしまったのはこれが主な理由でした。

「介護リフト=機械」であり、「使い方が難しい」「操作を覚えるのが大変」という第一印象を持っていました。また、介護リフトで移乗を行う際にスリングシートを敷きこむ作業がいることから、人力での介助と比べ、手順が増えてしまい、「時間がかかる」と感じ、「それなら人力で移乗をしてしまった方が早い」「利用者様を待たせない」と思っていました。以前の私のような先入観を持ってしまっている施設の介護スタッフは少なからずいらっしゃるのではないのでしょうか。実際に介護リフトを使うのは現場の介護スタッフになります。介護リフトが普及しない、活用し切れていない現状があるのは介護リフトに対してネガティブなイメージを持ってしまっているからだと思います。確かに、介護リフトを使用しての移乗介助は手順が増え、時間は人力での移乗介助と比べてかかってしまうかと思います。

ですが、人力での移乗介助と比べると移乗介助時の転落事故等の発生リスクは各段に下げることが出来ます。また、手順が明確であることから最初は覚えることが多くで大変かもしれませんが、使い慣れてしまうと人力での移乗介助と同じような感覚で操作が出来るようになります。

また、スリングシートの装着に時間がかかるかもしれませんが、介護リフトで利用者様を吊り上げている時はお互いの顔を合わせることが出来ます。顔を合わせることで自然と笑顔になる、会話をする等、利用者様と関わる時間を設けられます。私は昔、介護リフトで利用者を吊り上げている時に施設の窓から見える景色を見てもらい、会話を通じて季節を感じてもらったりしていました。更に介護スタッフ個々の体格差や技術に関係なく、皆同じように利用者に対して移乗介助を行えるようになります。それは他介護スタッフへ向けた技術指導の負担軽減にも繋がっていくかと思います。

介護リフトは高い?

施設を運営する側にとって、この部分が大きなネックになっていると言われています。比較的安価と言われている床走行式リフトでも購入するのに約50万円近くかかりますし、天井走行式リフトだと更に金額が上がります。そのため、介護リフトの購入に前向きになれない、購入するにしても複数台同時は難しく、どこから導入したら良いか見当がつきにくいため購入を踏みとどまってしまう施設様も多いかと思います。

また、介護リフトを購入したとしても現場の介護スタッフが活用出来ない可能性も考え、費用対効果を得られるのか不透明になってしまうことも普及の妨げに繋がってしまっているかもしれません。

ですが、介護リフト購入による費用はかかるかもしれませんが、腰痛で離職した介護スタッフ補充のための採用に費やす費用や、事故等による怪我にかかる治療費(介護スタッフ、利用者共に)等のコスト削減効果はかなりのものです。また、それら目に見えるコスト削減だけでなく、腰痛がある介護スタッフをカバーしてまた別の誰かが無理をするという悪循環の解消にも繋がっていきます。そして、悪循環の解消から介護スタッフの負担が軽減し、介護スタッフの休職や離職の削減や定着率の向上にも効果があります。また、肉体面だけでなく、精神面にもゆとりが生まれ、介護スタッフ同士の円滑なコミュニケーションや新たな取り組みに対して前向きになれる、取り組みの実践が出来るようになります。その結果、施設の持続的な経営にも繋がります。目の前の成果だけでなく、数年後の将来に得られる成果を見据えると、導入当初は費用等の負担が大きいかもしれませんが、継続的に取り組んでいくことで、施設の高い稼働率の維持や魅力のある職場環境等、将来的に施設が得られるメリットは多くなります。

介護リフトに対して「移乗介助を楽にする」「腰痛予防等、身体への負担軽減のために使う」という印象を持っているかと思います。確かに介護リフトを使うことは移乗介助における介護スタッフへの負担軽減に大きな効果があります。それだけでなく、利用者はもちろんのこと、施設全体へも好影響を与える福祉機器です。

様々なハードルはあるかもしれませんが、介護リフトを活用することは必ず良い成果を生み出すことが出来ると私は身をもって体感しました。将来、ベッドや車椅子と同じように介護リフトを使うことが当たり前の世の中に出来るよう、私は介護リフトの普及に努めていきたいと思っています。

少しでもご興味があれば、一声掛けて下さい。弊社は、日本初の介護リフトのサブスク(定額)サービス「M.I.S.」の東日本代理店となっており、リフト導入の費用対効果の見える化や、スタッフ向けの技術研修も含めたトータルサポートが可能です。1980年代からいち早く介護リフトを取り扱ってきた「リフトの目利き」ならではのご提案力で、皆様の快適な職場環境作りのサポートをしていきます。

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この記事を書いた人 山下奨
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元介護士。最初は「No!リフト」派だったのが、次第にリフトの魅力に引き込まれ、「リフトを世の中に広めたい」と一念発起し、営業職へと転職。
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