こんにちは。ライフサポートチームの髙木です。
暑かった夏がようやく終わって、やっと涼しくなったと感じる間もなく、あっという間の秋が走り去り、気が付いたらもう年の瀬というふうに、季節が早送り
私の担当させていただいているご利用者様の中にも、体調を崩したり怪我
治療で病気や怪我自体は治ってお家に帰っても、体力が落ちていたり、感覚が鈍ってし
今まで無意識にできていたことになんだか違和感を覚えること
今回は、福祉用具専門相談員の活動の中でも、生活に起きている小
特別にすごい内容ではないとは思いますが、普段活動しているときに福祉用具の人ってこんなこと考えているんだ~程度にお読みくださいませ。
1ヶ月で5回というハイペースなご自宅訪問のワケは・・・・
今回ご紹介するのは、今まで大きな不自由なく元気に暮らしていた60代男性のケースです。
5ヶ月間の入院生活を経て、祝!自宅復帰!!
そこから1ヶ月間、モニタリングを続けてきました。
退院前の家屋調査では、長い入院生活だったため、自宅内での生活
そのため、安全面を優先し、立ち座りや移動などの心配ポイントにベッドや手すりな
日常の業務の流れからすると、ちょっと訪問頻度が高いです。
これには理由がありまして・・・。
福祉用具による生活環境整備は、一度使い方が決まると大きな変更はそこまで多くはありません。
そうなの?と思われる方もいるかもしれませんが、自宅のテレビや食器棚、冷蔵庫などは1か月に何回も配置換えすることがないのと同様です。
しかし今回のケースは、退院後に私の想定を超えてご本人がどんどん回復され、福祉用具の環境設定を短い期間でアップデートする必要がありました。
長い入院生活から自宅に戻った嬉しさや、比較的ご年齢が若いことも大きな後押しとなったのかもしれません。
これ、私にとってはとっても嬉しいケースです!
ただ、どんどん元気になってゆく過程で、想定していた動線が広がったことによって、退院当初に用意していた福祉用具が却って生活に必要な移動の邪魔になってしまう懸念があり、ものを減らしたり、位置の変更や微調整を合わせて行う必要性があるため、1か月に5回という頻度での訪問となりました。
この日の訪問目的は、浴室の入浴いすの納品とベランダの出入りのために設置した手すりの利用状況の確認です。
ちなみに、入浴用いすも含め、介護に必要な福祉用具で肌が直接触れる入浴用品、またポータブルトイレなど(特定福祉用具と言います)は、介護保険制度を利用した購入が決まりとなっています。
「もの」を選ぶときに考えていたこと
今回の入浴用いすは、肘掛けのない、ミドルサイズの折りたたみ式のものを選びました。
折りたたみ式は使わないときに畳んで脇に置いておくことができる利便性があるので、一昔前に比べるとかなり一般的になっており、つい私たちも当たり前のように選びがちですが、実は折りたたみ自体の工程を敬遠されるケースも稀にあります。
今回は事前に折りたたみできないシンプルな入浴用いすの評価も行い、折りたたみできることのメリットを実感してもらうことができています。
また、今回のお風呂は、トイレと一体型のユニットバスであったため、ご本人と介助する2人が入ると自由に動くことができるスペースに限りがありました。
そのため、介助する方がご本人の身体を支え安全の確保をしつつ、折りたたみができることが必要だったので、背もたれ付近にあるレバーを握って軽く引き上げるだけで畳める機能が付いているものとしています。
肘掛けについては、悩む部分もありました。
肘掛けは、座る姿勢が不安定な方の姿勢を保つためなどに選ぶのですが、今回のケースでは十分安定して座ることができる方でしたので、肘掛け無しとしました。
今後の身体の変調などの要素も大きく見積もって考え、肘掛けありという選択肢をとりがちなシャワーチェアですが、折りたたみの際に有っても使わない肘掛けの上げ下げの工程が入ることで、多すぎる機能が却って生活の流れを阻害する可能性の方を考慮しています。
ちなみに万が一、身体の変調があり、今回の入浴用いすの機能だけで足りなくなってしまった場合は、条件はあるものの介護保険制度での購入は可能です。
最後に大きさですが、これも悩みどころがありました。
浴室の限られたスペースのことを考慮すると、小さい機種を選びたいところ・・・。
しかし、小さい機種は小柄な方を想定して作られているものが多く座面が低いため、背の高い方が座ると立ち上がる際にお尻が上げにくくなるということもあります。
小さい機種と中くらいの機種を比べる事前の評価では、小さい機種の座面高を目いっぱい上げれば立ち座りは可能でしたが、ご本人からも「この高さでも大丈夫だけど、立ちやすさは中くらいの大きさの方かな」という話が何回か聞かれたため、2つの入浴いすを浴室に持ち込み、折りたたんで保管する場所へ移すという流れをシミュレーション。
訪問看護さんのアドバイスもいただきながら、結果的に中くらいの大きさでも影響は少ないことがわかったので、今後1段高い座面高にも調整ができるように中くらいの大きさのものにしています。
洗濯物を干しも安全にできるように
次に、ベランダに設置した手すりについてです。
最近は様々な洗濯機が出ていて、乾燥機付きのものなども多くなってきましたが、乾燥機が使えない素材の洗濯物などは洗った後に干す作業が必要となります。
部屋干しする場合はあまり影響はありませんが、外に干す場合はベランダに出ることになると思います。
皆さんのお家のベランダはどんな感じでしょう?
私の自宅は、窓を開けたら15センチくらい下がっているので階段1段を下りるようなイメージです。
手ぶらであれば、窓の縁辺りを手すり代わりにつかんで下りれば問題ないのですが、洗濯物を持って同じことをしようとすると、どうしてもバランスを崩すことがあります。
今回のケースでは、私の自宅の倍の30㎝くらいの段差を跨いでベランダに出る必要がありました。
みなさん30㎝くらいの段差があると想定して、何もつかまらずに跨ぐ動作をイメージしてみてください。
30㎝くらいの段差を跨ごうとするとバランスが崩れるのがイメージできますでしょうか?
健常者は無意識のうちにバランスが崩れるのを筋力でカバーしているのですが、筋力が低下してしまった方には、なかなかにこれが難しいのです。
今回のケースでは、ベランダ側に突っ張り式の手すりを縦に取付してバランスをとりやすくしてみました。
最初は、部屋の内側に設置しようと思ったのですが、すぐ横がキッチンになっており、ご本人が頻繁に行う調理の妨げになることがわかりました。
そのため、ベランダ側の設置となっています。
屋根はきちんとあるものの、風が強い場合は多少雨の吹き込みもあるかもしれないため、床側の部品は水に強い部品に変えています。
「わずか1cm」が安心・安全を左右することもあるから
モニタリングは、「介護サービスを継続している利用者が、作成したケアプランのとおりにサービスを受けているかを確認するためのヒアリング」なんて言われています。
ここまで1カ月間の訪問でケアプランに基づき、福祉用具を活用し、生活に必要な動きはきちんとできているのかどうか、変化に伴う新たなニーズやリスクがないのかどうかを観察し、必要なアップデートを行ってきました。
正直なところ、ここまで書いてきた文面は頭の中で考えていたことですので、実際に現場で行っている実作業としては15分から30分くらいでしょうか。
入浴用いすの高さを2㎝調整するとか、手すりの位置を1㎝ずらすとか、見ていると地味だし、そんな違いなんかないでしょ?って思いますよね・・・。
でも、その1㎝や2㎝の違いで、利用している方の人生に影響が出るかもしれないんです。
「手すりがあと1㎝近かったら掴み損ねずに転ばなくて済んだのに・・・・」
「ベッドの高さがあと1㎝高かったら、人の力を借りずに立ち上がることができたのに・・・・」
こんな思いをする方がひとりでも減るように、たとえ住環境や身体状況が変わったとしても、その変化に応じた生活環境を整えるのが福祉用具の務め。
そこで福祉用具専門相談員は、その方のお住まいを訪問し、実際の生活動作を観察した上で、福祉用具が適切に活用されているか、改善の余地はないか、などを見極める必要があるのです。
そこにはヒアリングだけではわからないことがたくさんあります。
やっていることは地味だけど、絶対に適当にはできない大切な仕事だと私は考えています。