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福祉用具のマニアックが送る~福祉用具と働き方と考え方~
2021.7.20

皆さんこんにちは!福祉用具一筋15年の栗原です!福祉用具の素晴らしさ、価値、楽しさを皆さんにお伝えできるよう日々勉強しておりますので、今後とも宜しくお願いします。私がこの15年で恵まれていたなぁ、と思っていることは新卒の時代から福祉用具やシーティングなどの専門知識に対してマニアックに拘る先輩、先生方にたくさん出会ってこられたことです。そんなマニアックな方々から教えて頂いたことを少しでもわかりやすく世の中に還元しなければ!と思いノーリフティングケアやリフト、シーティングなどについて発信しています。そんな活動を続けていたら、新宿の訪問歯科の先生に「マニアック!」と呼ばれるようになり、地域であだ名として定着してしまい恐縮している今日このごろです・・・。

さて、そんなマニアック(他称)栗原が福祉用具の活用を通じて皆さんにお伝えしたいことは以下の3つのポイントです。

1.『仕事のムリとムラの軽減』

2.『腰痛予防』

3.『人材定着』

今回は特に1.と2.に着目してお話していこうと思います。

「このやり方しか知らない」はやり方を変えるチャンスの言葉!

現在私は高齢者施設を中心にノーリフティングケアの普及に努めています。そこで職員の方々と一緒に取り組む中で、以前に行っていたケアを振り返ると、「当時はあのやり方しかないと思っていた」という感想によく出会います。一つの事例としてですが、床ずれケアに関して私が聞いた昔話をご紹介したいと思います。昔々ですが、床ずれの最先端のケアはドライヤーで乾かすことだ!と言われていた時代があることをご存知でしょうか?15年前の当時で「以前は」という言葉がついていたので、20年くらい前の話になるかと思います。私自身も聞いた話なのと、そういう話もあったよね~と看護師の方の感想を聞いたこともあるため、全てではありませんが、一部ではそのような方法をとられていたそうです。今の常識からすれば「とんでもない!」って思いますよね?でも、実際に行われていたケアだそうです。「今行っている方法がベスト!」とか「この方法しかない」という思い込みを捨て、もしかしたらより方法が隠されているかも?と考えていくことが仕事のムリとムラを減らすためのスタートと考えています。

卒業1年目の同窓会で飛び出したびっくりした一言「腰痛ベルトは一人前の証!」

現在、介護職の方が退職する理由の一つとして、『心身の不調(腰痛を含む)』というものがあります。(図1参照 出典:社会福祉振興・試験センター「平成27年度社会福祉士・介護福祉士就労状況調査」)

 

私の個人的なエピソードで恐縮ですが、今でも忘れられない話が1つあります。私は福祉系の4年制大学の卒業で、卒業1年後に同期での集まりがありました。その場には介護の現場で働いている同級生が多かったのですが、その中の一人が笑顔で発した言葉が衝撃的でした。『最近腰痛がひどくなってきて、やっと一人前になったな!って先輩に言われたんだよねー』おそらく、この言葉を発した彼からすれば日常の一コマだったのだと思います。しかし、私には衝撃でした。なぜかというと、私は新卒から福祉用具貸与の事業所に就職していたため、車椅子などの重い商品の運搬はありましたが、車に積むときなどは二人がかりで行うこともあり特に腰痛はありませんでした。わずか1年ですが、働く環境が変わるとここまで腰痛に対する認識が変わるのか、と衝撃的だったのです。この話は早15年前の話なので今では変わってきていると思いますが、まだまだこれに近い話を耳にすることがあります。

30キロお米は重い!でも、30キロの利用者さんは・・・?

そもそも介護・看護の現場では腰痛がなぜ発生しやすいのでしょうか?中腰姿勢などの不良姿勢や捻じりによって身体にかかる負担、またその回数など様々な要因があります。ですが皆さんに改めて大切なことに気づいてほしいのです。『30キロの人は重いのです』。何を今更、とおっしゃる方もいると思いますが、私が行っているノーリフティングケアの研修の中で参加者の方々に必ずする質問があります。それが『30キロの利用者(患者)さんの印象は?』という質問です。すると参加者の方々は様々な答えを返してくれますが、ほぼ必ず3人以内には「軽い」という回答が返ってきます。そして、答えてくれた方に続けて質問をします。『30キロのお米の印象は?』もう分かりましたよね?ほぼ必ず「重い」という答えが帰ってきます。その結果、『30キロの人は軽いけど、30キロのお米は重い』という矛盾した印象ができあがるのです。

日常の判断に「なぜ」を足してみよう!

さっきの質問はなぜ矛盾をしたのでしょう?私達は何かを判断するときには無意識・直感的に判断をしています。私達が無意識・直感的に判断をするのは大体が過去の経験や常識からではないでしょうか?先程の質問は30キロの人は自分の体重、もしくは平均的な体重からすると「軽い」という判断から出た答えだと思います。それに対して30キロのお米は10キロのお米すら重い、できれば持ちたくない!という日常の経験から「重い」と判断されています。ここで皆さんと一緒に考えたいことは、30キロの人も30キロのお米も同じ重さで、運んだりする場合に身体にかかる負担は人もお米も同じなのだ、という客観的な事実です。

ADL(日常生活動作)が低下したり認知症の進行により意志疎通がスムーズでない利用者さんを持ち上げて移乗をする、これは同じ重さのお米を動かすことと身体にかかる負担は同じ、もしくはそれ以上になります。もしかしたら中には30キロのお米なんて軽い!という筋トレが趣味の人もいるかもしれません。しかし、中には重くてストレスに感じる人がいるかもしれない、というふうに、「周りの仲間はどうだろう?」という視点で判断することが大切だと考えています。この視点が抜けていると何気ない発言が他の人にはストレスであったり、プレッシャーになるかもしれません。

ノーリフティングケアの目的は腰痛予防・・・だけじゃないっ!

また、持ち上げる方の負担だけではなく、持ち上げられる方、つまり利用者さんにも目を向けてみましょう。先程の質問に加えて、続けて聞いている質問があります。『30キロのお米を手で運ばなければならないときに落とさず、ぶつけず、袋を破かずに運べますか?』この答えは大体の人が『多分ムリ!』と答える方がほとんどです。そこでもう1問、いじわるにも文中のとある2文字を別の3文字に変えて質問を続けるのです。『30キロの利用者(さん)を手で運ばなければならないときに落とさず、ぶつけず、袋(皮膚)を破かずに運べますか?』この質問をすると先程『多分ムリ!』と答えた方々がイヤ~な顔をしながら『・・やれます』と答えてくれます。・・・我ながらいじわるな質問だなぁといつも思っています。でもこれ、すごく大事な質問なのでお許しください。たまに『人の身体は持つところがあるからできる!』という悲しい反論を頂くこともありますが、脇の下やズボンは持つところではないから持たないでくださいね?

お米はムリだけど利用者さんならできる、という矛盾した答えのツケは利用者さんの身体に現れます。それが床ずれであったり、筋緊張の高まり、誤嚥性肺炎などといった『二次障害』なのです。個人的にはノーリフティングケア=腰痛予防という印象がもったいないなぁと思っています。私を始め福祉に関わる方たちは利用者さんの笑顔が好き、という人が多くいることを知っています。職員の腰痛を予防し、利用者さんの二次障害の予防でたくさんの笑顔を見ることができる、そんなノーリフティングケアの重要性とそれに関わるリフトを始めとした福祉用具の価値をもっとたくさん皆さんへ伝えていきたいと考えています。

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この記事を書いた人 栗原俊介
福祉用具一筋15年。福祉用具に関する発信を続けていると「マニアック」と呼ばれるようになりました。趣味のロードバイクは自分の身体でシーティングの効果を実感したいことが始めた動機です。
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