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【元介護士が伝えます!】ノーリフティングケアの普及に大切なこと
2021.7.26

皆様、こんにちは。

トランスファーサポートチーム営業の山下奨です。

「介護スタッフの負担軽減にリフトは入れたいけど、現場が使ってくれるか、使いこなしてくれるか不安」

「どうやったら現場の介護スタッフがリフトの導入を前向きに考えてくれるか悩んでいる」…こんなお悩みや思い、お持ちではありませんか?

私は当社に入社以前、10年間介護施設で介護士として勤務し、日常業務だけでなく、施設のノーリフティングケア普及活動にも携わっていました。

今回は元介護士が介護現場の経験から、リフトの導入やノーリフティングケア普及のために大切なことをお伝えし、皆様のお悩みを解消します。

「リフト」の前に「ノーリフティングケア」について知ってもらおう

「抱え上げない介護のためにリフトを入れようと考えている」

私が前職の施設でリフト導入前に聞いた言葉です。当時の私は、その言葉を聞いて、「リフトを使った移乗」=「抱え上げない介護」という理解になってしまっていました。同じような理解をしていた同僚も多くいました。そのため、リフトを使うことに意識が向いてしまい、本来の抱え上げない介護(ノーリフティングケア)を理解していないまま「(リフトを使うことが)面倒くさい、時間がかかる」といった理由からリフト導入に対して否定的になっていました。当時の私と同じような考えを持っている介護スタッフが今も多くいるかと思います。リフトを使うことは抱え上げない介護(ノーリフティングケア)の目的ではなく、手段の一つとなります。

ノーリフティングケアの目的は介護スタッフと利用者様双方の身体に負担の少ない介助を実践し、継続的に介護スタッフが快適かつ安全に働ける、利用者の生活の質(QOL)の向上を実現する職場環境作り(労働安全衛生マネジメント)をしていくことです。この考えを知ることが出来ているか出来ていないかで、リフトや抱え上げない介護(ノーリフティングケア)についての捉え方が大きく変わってくるでしょう。

「リフトの使い方」の前に「何のためにリフトを使うのか」を伝えよう

新しい機器を導入した時にありがちなことですが、機器の使い方(手順)を覚えないといけないという気持ちになりがちです。使い方を覚えることも必要ですが、使う目的を理解していないと効果的に機器を使うことには繋がりません。

前職の施設でリフトの技術指導をしている時、前傾姿勢のままリフト移乗で使うスリングシートを利用者様の身体の下へ敷く介護スタッフがいました。その介護スタッフに声を掛けると「スリングシートを敷くのに必死になりすぎていました。」と返答が…。リフトは腰痛予防に効果的な機器です。ですが、リフトを使う時の姿勢が腰痛に繋がるような姿勢だったらどうでしょう。リフトで利用者を抱えずに移乗出来たとしても、腰痛予防の効果を得られにくくなってしまいます。使い方を覚えてもらう前に、機器を使う目的を理解してもらうことが効果的な機器の導入、安心安全かつ継続的な機器の使用に繋がります。

リフトの使い方は「やってみて、やられてみて、教えてみて」覚えていこう

私が介護スタッフにリフトの技術指導を行う上で心がけていたことは、手順を覚えてもらうだけではなく、使われる側(利用者様)のことも考えた、安心で安全なリフトの使い方を取得してもらうことでした。

ですが、私が指導を始めたばかりの頃は手順を覚えてもらう、出来るようになってもらうことに必死になりすぎてしまい、介護スタッフに何度もリフト操作の練習をさせていました。そのため、介護スタッフが手順を追うことに必死になってしまい、利用者様がつらそうな表情をしているのに気付いていない、という状況を見かけたこともありました。ある時、何度やっても上手く出来ない介護スタッフがいて、「どうしたら上手く出来ますかね。」と相談を受けたことがありました。その介護スタッフから「ちょっと私にスリングシートを敷いてもらってもいいですか?」と頼まれ、いざ手本を見せると…「ああ、こういう風になるんですね。いつもやってばかりで気付けなかったけど、いざやられてみると気付くことがあって…、なんとなくわかってきました。私、もしかしたら利用者様に痛い思いをさせていたのかもしれない。」と話していました。コツを掴んだのか、以前に比べてリフトの使い方に変化が見られました。

その時、私は「使い方を覚えることも必要だけど、介助される側(利用者様)の立場になることも大切だな。そうしないといくら自分達(介護スタッフ)がリフトを使えていたとしても、利用者様に怖い、痛い思いをさせていては安心安全なリフトの使用ではないな。」と気付かされました。

そこから、正しい使い方だけでなく、誤った使い方も介護スタッフに体感してもらい、何のために操作手順があるのか、どうしたら介護スタッフと利用者様双方にとって安心で安全な使い方を出来るのか理解してもらい、伝達していくよう心掛けるようになりました。

介助する側、される側どちらの立場も経験してみることが大切なように、自分が教える側になったり、反対に教えられる側になって初めて見えてくることもあります。そこで、営業職になった今ではどうすれば上手く使えるのか介護スタッフ同士でアドバイスをし合うよう技術指導を行っています。お互い意見交換を行うことで、ただ使うだけではなく、快適な使用方法に気付けることに繋がります。

目先ではなく、一か月・一年・数年先の未来を考える

「リフトは時間がかかる」「自分の手で移乗した方が早い」私が施設でリフトを導入した当初、リフトに対して抱いていた思いです。確かに移乗の場面だけを考えると人力の移乗の方が時間はかからないと思います。ですが、もし人力で移乗介助をして介護スタッフが腰痛を引き起こす、利用者様を転倒や転落をさせて怪我をさせてしまう、利用者様が強張ってしまい筋緊張が亢進してしまい嚥下機能や関節の可動域に悪影響を及ぼしてしまうことに繋がってしまうとどうなるでしょうか。

介護スタッフや利用者様の通院や医療的処置、食事摂取時間の増大や排泄・衣類着脱の介助に費やす時間が長くなってしまいます。リフトを使っての移乗介助を行った場合、介護スタッフの腰痛や利用者様の事故や怪我の発生リスクを格段に減らすことになります。また、利用者様の筋緊張緩和から嚥下機能の改善や関節の可動域拡大から食事や排泄、衣類着脱の介助に費やす時間の削減に繋がります。移乗介助時以外の時間も含めて考えてみると、結果的にリフトを使った安全安心な移乗介助を行うことで利用者様に介助を費やす時間の削減や介護スタッフの負担軽減に繋がります。

これを一か月や一年、数年継続していくとその差をどんどん大きくなっていくでしょう。「今」ではなく「一か月、一年、数年先の将来」を見据えて考えてみてみましょう。きっと介護スタッフや利用者様にとって最適な対応はどれなのか、気付くと思います。

私はこの部分からリフトの虜になりました。ゆっくり時間をかけて利用者様にとって安全で安心なリフトの使い方をすることで、利用者様へ好影響を与えることが出来、利用者様の身体機能を最大限に生かしていくことでQOLの向上に繋がっていくことを見出すことが出来ました。

すぐに結果を求めず、続けてみる

ノーリフティングケアの目的は介護スタッフと利用者様双方の身体に負担の少ない介助を実践し、継続的に介護スタッフが快適かつ安全に働ける、利用者様の生活の質(QOL)の向上を実現する職場環境作りです。そのため、リフト等の福祉用具を導入して、環境を整えてすぐにノーリフティングケアの実現は難しいです。また、効果もすぐには現れず、継続的に取り組むことで効果は徐々に現れてきます。

私自身も前職の施設でリフトを導入して、ノーリフティングケアを実践し始めた頃は「リフト入れたけど、何も変わっていない。入れた意味あったかな。」と不安に思う時がありました。導入一か月後にアンケートを取る機会があり、その時に振り返ってみたところ、「そういえば転落、転倒させそうな怖さがなくなった気がする」と思いました。リフトを活用したノーリフティングケアを実践していくことで「リフトを使うと移乗に不安がなくなるな」「なんだか利用者様の表情も柔らかくなった気がする」と感じ、更に私自身のケアに対する見方も変わりました。

また、リフト導入当初は「リフトって面倒くさい、時間がかかる」「きっと使わなくなるよ」と話していた介護スタッフが一年後には「リフト使うと安心して移乗が出来るよね」、三年後には「この人、そろそろリフト設置した方が良いんじゃない?」「もっとリフトないの?ないと困る」等、リフトに対して前向きに捉えるようになりました。

今振り返ってみると、前向きになったのはリフトに対してだけでなく、ケアの考え方や介護スタッフ同士との仲等、職場環境全体を前向きに考えるようになったと思いました。利用者様は勿論、介護スタッフの表情も明るく穏やかになりました。すぐに成果を求めず、施設全体で継続して取り組んできたからこそ、このような職場環境を作り上げることが出来たと思います。

ノーリフティングケアの実践には時間がかかります。すぐに成果を求めず、「続けていけば成果は得られる」と思い、継続的に取り組んでいくことが大切です。こんなことを言っている私ですが、施設でリフトを導入した時にはリフトに対して否定的でした。ですが、施設でのノーリフティングケアの実践を続けていくうちに、リフトを活用したノーリフティングケアの魅力に引き込まれました。

「No、リフト」と言う人が少なくなり、「ノーリフティングケアをしたい」と思えるような人々が増えていけるようサポートしていきたいと思いますので、簡単な相談でも良いので、一声おかけ下さい。

 

 

 

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この記事を書いた人 山下奨
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元介護士。最初は「No!リフト」派だったのが、次第にリフトの魅力に引き込まれ、「リフトを世の中に広めたい」と一念発起し、営業職へと転職。
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