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福祉用具 多機能は万能なのか?

スタッフコラム 高木仁志  -  2024.8.07

こんにちは!
暑い毎日が続き、半分溶けかかっているライフサポートチーム髙木です。
元々体力には、あまり自信がある方ではないのに加え、日頃の運動不足もたたり、年々夏がしんどいです・・・。
せめて気分だけでもリフレッシュしよう(う、運動せぇよ!)と思い、先日久々にスーパー銭湯へ行ってきました。
いや~、今のスーパー銭湯ってすんごいですね~!
受付が無く、ほぼ従業員の方に会わずに、チェックインしてお風呂まで入るスムーズな流れも、色々なお風呂の種類があって楽しめるのも、リストバンドで館内の飲食など全て現金無しで身軽で利用できるのも、ひたすら驚きの連続でした!!
世の中ってどんどん便利に快適になってゆくんですね~。
そこで今日は、どんどん進化を続けて便利な機能が増える福祉用具の世界において、私たち福祉用具専門相談員が気にかけておきたいことに目を向けて書いてみようと思います。

福祉用具の近況

今までにも触れてきましたが、福祉用具は日々進化を続けています。
利用される方の身体や生活のことを考えた便利な機能もどんどん増えてきています。
介護保険が始まった当初は、例えば介護ベッド1つを考えても、
「背中の角度や膝の角度、ベッドの高さが電動でボタン1つで変えられる」という機能で、
「起き上がりや立ち上がりが楽になった」方々はたくさんいると思います。
新しいベッドが発売されるごとに、住環境のスペースを考慮してベッドの高さが垂直に上がったり、背中を上げる際にできるだけ身体への負担を少なくする構造に変えたり、スマートフォンと接続して音声で操作ができるようになったりと進化を続けてきました。
このさらなる進化により、今までベッドを使うことができなかった方々にもベッドを導入することが可能となるケースが増えました。
ただ、道具の機能が飛躍的に進化を遂げる際に、避けては通れない道があるのも事実です。
それが、「操作の複雑化」です。
先に記したベッドに限らず、道具には必ず付きまとうことと言えるのかもしれません。
携帯電話がガラケーからスマホに進化を遂げる道でも、操作の複雑化がネックとなってスマホに移行することをためらう方がいたり、操作を簡易にするために機能を絞ったシンプルなスマホを選択されている方もいるのではないでしょうか?
私個人としては、人それぞれが携帯電話に対して何を、どこまで求めているかによって、自分の生活に沿った機種の選択をしているように、福祉用具も同じように使う機種の選択が大切であると思っています。

何を選択すべきなのか

では、例えばどんな選択が必要になるのでしょう?
福祉用具の中でも利用されている方が多い介護ベッドでお話してみようと思います。
下のイラスト左は、電動ベッドの1モーターと呼ばれる、頭(背中)だけが操作できるシンプルな機能のベッドリモコンです。
そして下のイラスト右写真は、、電動ベッドの3モーターと呼ばれる、頭(背中)角度・足角度・ベッドの高さを個々で操作できるベッドリモコンです。

CORE Neo 1モーター(背上げ)リモコン    CORE Neo 3モーター(背上げ/脚上げ/高さ) リモコン

1モーター    3モーター

注目して欲しいのは、リモコンに配置されているボタンの数です。
左のリモコンは、頭(背中)だけの操作をするため、頭(背中)の上下に対応するボタンがそれぞれ1つずつ配置されているだけです。
しかし、右のリモコンは、頭(背中)角度・足角度・ベッドの高さの3つの動きに対して、それぞれ上下のボタンが配置されています。
それだけで、合計6つのボタンを使い分ける必要があります。
加えて、昨今のベッドは、各ベッドメーカーさんが、ベッドが理想的な動きをしてくれるように、頭(背中)と足が自動的に連動して動く機能を搭載しています。
その上下ボタンが2つ追加されて、合計8つのボタンが配置されます。
ベッドのメーカーさんは様々あり、リモコンの形状なども違いはありますが、基本的に機能が増える場合は、ボタンの数が増えてゆきます。
慣れてしまうと、使うボタンはある程度集約されてゆくのですが、使い始めは思いのほか迷ってしまうことも多いかもしれません。
多くの機能を使いこなしてゆく必要性がある方には、定着するまで丁寧にサポートを行うのはもちろんですが、私たち福祉用具専門相談員が気を付けなくてはならないのは、「最新式だから」や「たくさんの機能が備わっているから」という理由だけで、福祉用具を提供しないようにすることだと考えています。
たとえば、喘息など呼吸器の疾患で、夜間の呼吸が辛い時だけ背中を起こしたい希望がある方に、ボタンがたくさん配置されたベッドを提供した場合、夜間暗くて違うボタンを押してしまい、ベッドの関係ない部分が動いてしまうことで、他の動作への悪影響に繋がる誤操作というケースも可能性としては考えられます。
もちろん、身体状況などにより、他の機能も使うケースが想定されるため、それを見越して多機能タイプのベッドを導入するケースも多いです。
ベッドだけではなく、車椅子など他の福祉用具にも同様のことが言えると思います。
福祉用具を誰がどのように使うのかも、きちんと把握して、利用される方と相談しながら、適切な機種を選びたいと思っています。

役割を分ける選択肢

ベッド同様に車椅子も利用されている方が多い福祉用具です。
世に出回っている数だけ考えても、ベッドよりも多くの選択肢があり、私たち福祉用具専門相談員にとっても悩みどころの多い福祉用具とも言えます。
現場を回っていて、車椅子に求める条件面で話題として挙がるのは、
「軽い」「コンパクト」「費用負担が少ない」「操作がわかりやすい」といった、比較的判断しやすいことから、「座るところが広すぎる(狭せぎる)」「肘掛けが高い(低い)」「ハンドルが高い(低い)」など、少し使ってみて、じわじわと感じ条件として挙がってくるものもあります。
メーカーさんとしては、このような現場で出てくる様々な条件をすくい取り、できるだけ多くの方々に使ってくれるような車椅子を作ろうと考えてくれています。
ただ、現実的に、どうしてもオーダーメイドのように、個々の条件に合わせて1台1台を設計することはできないため、ニーズが多い部分を中心に考えざるを得ない部分があるのも事実です。
車椅子の1番の利用目的としては、デイサービスや近隣の散歩・買い物などの「外出」が挙げられるのではないかと思います。
「外出」をする車椅子を選ぶ際に考えなくてはならないことはたくさんありますが、特に一般的な椅子にご自分の力で座ることが難しい方の場合は、一定時間座ることができる「椅子」としての機能も車椅子の機能として確保する必要があります。
そのために、車椅子全体や背中を後方へ傾ける機能(ティルト・リクライニング機能)を備えた車椅子を選択肢として考えることがあります。
車椅子の形を楽な姿勢に変えることができるため、重要な機能である反面、車椅子を後方へ倒すことができる機能を持っていることで、車椅子自体がひっくり返らないように車椅子後方に転倒を防止するバーが付いており、それがつっかえてしまうことで、車椅子の前輪が挙げにくくなってしまい、上がりかまちなどの段差やスロープの傾斜を通行するための難易度があがることが課題になることが多いのです。
色々困りはて、普通型の車椅子であれば、比較的容易に通行の課題がクリアできることがわかったりすると、つい大きな課題をクリアしたくて、普通型の車椅子を導入してしまう方向を向いてしまうことがあるかもしれません。
私たち福祉用具専門相談員が、ここで忘れてはならないのは、福祉用具(この場合車椅子)を利用する方の24時間、1週間(少し大きく取れば1年)全体的な生活を見ることです。
部屋から玄関の外に出るという1つの課題はクリアできたとしても、そのあとの外出時の姿勢は保つことができるだろうか?
また、普通の椅子に座ることが難しくなってきている方だとしたら、食事の姿勢は大丈夫なのだろうか?
この車椅子に1年間座ったときに、身体への影響はどうだろうか?
もし、そのような課題が別の場所で起きる可能性があるのであれば、「役割を分ける」というのも1つの選択肢だと思います。
「部屋と玄関を移動する」車椅子、「長い時間を楽に座る車椅子(食事を安心して摂ることができる車椅子)」といった役割を分けることで、選ばれる車椅子も大きく変化します。
全てではありませんが、車椅子以外の福祉用具にも同じように役割を分けて考えた方がよいケースもあると思います。
使わない場合の保管スペースなど、考えなければならない点もありますが、「この福祉用具の〇〇の部分はよいのだけど〇〇の部分が今ひとつだな~」などと感じる場合は、「役割を分けて考えてみる」と新たな生活のステージが見えてくるかもしれません。
気になることがある方は、是非福祉用具専門相談員にご相談ください!

福祉用具
この記事を書いた人
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高木仁志
外食産業に15年従事し、東日本大震災を機に困っている方のお手伝いがしたいと一念発起。福祉業界に足を踏み入れる。プライベートでは、小学生と保育園児の長次男に振り回される、ラーメンが好きなおっさん。
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