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【インタビュー】日本の介護現場に寄り添うリフト「SOEL」ができるまで

202112月より取り扱いの始まった、介護リフトの注目新ブランド「SOEL」。開発元は弊社の関連会社である日本ケアリフトサービス株式会社(JCLS)です。これまで海外製リフトの輸入を通じて、ノーリフティングケアの推進に尽力してきた同社が、あえてハードルの高い「メーカー」になる道を選んだ理由とは……?最初のアイデアが生まれてから足掛け6年。念願叶って開発がスタートしてからは、国境を超えチームで取り組んだ「SOEL」。その舞台裏を知るべく、JCLSの高橋恒治社長とエンジニア榮将啓にインタビューしました。

SOELのフラッグシップモデルである床走行型MXと、エンジニアの榮将啓。

日本の介護現場に寄り添うリフトを、自分たちの手で形に


さかのぼれば、最初にSOELの企画アイデアが最初に生まれたのは約6年前。高橋社長のもとに、北欧スウェーデンからある相談が持ちかけられました。相談の主は、ある介護機器メーカーから独立して事業を立ち上げようと準備していたグループ。「日本やアジアの介護リフト市場に進出したいから知恵を貸してほしい」というのがその内容でした。

髙橋
当時から北欧製のリフトは、日本の介護環境で使うにはトラブルが多かったんです。というのも、北欧には「湯船に浸かる」という文化がなく、リフトも高温多湿な環境で使うことを想定していませんから。それで、日本の試用環境に耐えうるものをつくるために、我々からも機能面の要望をいろいろ出して、企画の議論が始まりました。ただ、彼らの会社立ち上げは結局途中で頓挫してしまったんです。我々としても、せっかくアイデアも出したし期待もしていたので、何とか形にしたい。幸いなことに、メンバーのひとりだった工業デザイナーが我々に協力してくれることになったので、だったら自分たちでつくろう、という結論に達しました。それで我々の会社にもエンジニア人材が必要になり、2020年に入社してくれたのが榮です。

2019年、パートナーとなる製造工場を訪ねて台湾を視察した時の様子。


僕は前職で約13年間、鉄道の車両検査や品質管理に従事していて、介護業界については全然わかっていない状態でした。ですから入社前は介護リフトに対して、ただ「介助者の仕事を楽にするもの」という程度の認識しかありませんでした。でも高橋社長と面談して、「3Kと呼ばれる介護業界の労働環境を変えたい」という視点を知って、微力ながらお役に立てたらと思ったんです。

髙橋
当時は、工業デザイナーがつくってくれた設計デザインの図だけがある状態で、我々は「これがあればなんとかなるか」と思って開発に踏み切ったんですが(笑)、彼の方は相当苦労があったと思いますね。


いろんな方にご助力いただきながらだったので、私ひとりではとてもとても……。まずはいくつか介護施設に伺って現場の声を聞くところからのスタートでしたが、実際に現場を知ると、思った以上に大変な仕事だなと思いましたね。

髙橋
これまでも日本のメーカーが開発したリフトはいくつも出ていましたが、天井走行型から床走行型まで違うタイプのモデルを自前で持っているブランドはありませんでした。天井走行型と床走行型ではそれぐらい開発の知見もノウハウも違うんです。ですが我々としては最初から両方のモデルを出したくて、あえてイバラの道に飛びこんだようなところがあります。とくにSOELの床走行型MXは、工業デザイナーがそれまでの案をガラッと刷新してくれて、デザイン・仕様とも斬新なものになったので、まさにフラッグシップモデルですね。


介護現場は女性が多いですが、非力な女性が大柄な男性を乗せて動かそうとするとかなりの力がいります。さらに、硬くなめらかな床ではよくても、絨毯の床だったりすると従来の床走行型では動かすのがすごく大変なんです。そういう声をお聞きしていたので、MXならそれを解消できると考えていました。

国境を超えたチームの粘り強いやりとりを経て


髙橋
この開発プロジェクトは、製造工場は台湾にあり、デザイナーはスウェーデンにいるので、会議は日本・台湾・スウェーデンをオンラインでつないで英語でやりとりしていました。コロナ禍もあったので、榮は台湾のスタッフともデザイナーともリアルでは1回も会えていないんです。


直接会えないまま国境を超えたチームが、オンラインのコミュニケーションだけでモノをつくり上げるというのは、なかなか大変な作業でしたね。海外と日本の文化の違いからくる感覚のズレもありましたし、微妙な部分が画面を通してだけでは伝わりにくくて……。加えて、コロナ禍で部品が手に入りにくいという状況もあったので、本来なら2021年の春にリリースしたかったところが、約7カ月遅れることになりました。

髙橋
多い時は週1でオンラインのやりとりをしていたよね。デザイナーがつくった3D CADの図面を、工場への指示書となる「モノづくりの図面」に落とし込むのも彼の仕事。3Dの図面をいったん平面図にして、必要な項目を全部そこに書き込んでいくわけです。


床走行型MXで一番苦労したのが、検証作業です。試作品ができると台湾から送ってもらって、テストしてはフィードバックするということを繰り返すんですが、デザイン上の理屈と現実とでは違うことが多く、200キロを超す重量を吊って傾斜させる試験では、鉄の脚が折れてしまうなど、びっくりしてしまうようなことも……。そういう現象はすべてレポートを作成して情報共有しつつ、細かな寸法を決め直したりしました。ほかにも、日本の感覚だとクレーム対象になるような細かい傷や塗装ムラなども、海外だと「これぐらいは許容範囲でしょ」という認識だったりするので、その感覚の溝を埋めるのは今も苦労しているところがありますね。

髙橋
彼は前職が品質管理ですから、できあがったものに対するチェックはまさにプロで、厳しいですよ。


苦労の中にも、検証の末に「これで行ける!」という手ごたえを得られた時の達成感は大きいですね。製品お披露目の場となったH.C.R展では、初日に会場に立っていたんですが、来場者の方の反応などを見ていると、これからも頑張る意欲が湧いてきました。

国内のみならずアジア中の介護従事者をサポートしたい


髙橋
SOELブランドは、国内のみならずアジア中の介護従事者の皆さんにもお使いいただきたいという思いで最初からつくっています。JIS規格ではなく国際的なISO規格をクリアすることに挑んだのも、そういう意味からです。水準をそこに持ってきていたので余計大変だったと思います。


前職で手がけていたのは検査や品質管理だったので、このように一からモノづくりをするのは初めての経験ですが、もともとモノを作りたい気持ちはあったし、やっぱりつくるのは楽しいですね。今は現場からの声をもとに、細かな寸法の調整などに取り組んでいます。

日本の介護施設に多い低床ベッドにも対応できるよう、脚のサイズをミリ単位で検証。

髙橋
天井走行型と床走行型に続いて、次はスタンディング型の開発も視野に入れています。まだまだ日本の介護市場に、リフトは浸透しきれていません。ただ最近は、働き手の不足や腰痛など労災の問題がクローズアップされて、リフトの必要性に注目度が高まっています。そこで現場にリフトを定着させるためにリリースしたのが、ハードとソフトをセットにした「M.I.S.(介護リフトのサブスクリプションサービス)」です。JCLSとしては、これで日本だけでなくアジアで働く介護従事者をサポートしていきたいんです。

日本の介護現場にとことん寄り添うことをテーマに開発された「SOEL」の誕生秘話、いかがだったでしょうか?すでに導入された施設様からも嬉しいお声をいただいている「SOEL」は、サブスクリプションサービス「M.I.S」でもご利用いただけます。腰痛リスクマネジメントの観点から、実際の導入効果を数値で見える化し、その費用対効果にご納得いただいた上で本使用に進めるから、「リフトは高いし、活用できるか不安」という施設様におすすめです。ご関心をお持ちの施設様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

M.I.S
ソエル
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