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#57

過去の移乗・移動支援を視点を変えて振り返る

みなさん、こんにちは!アップライド福祉用具専門相談員の佐藤です。
私はこれまでに、導入事例などを中心に、いくつかの記事を書いてきました。
どのケースも、弊社の特長である「移乗」や「移動」にかかわるもので、
一般的には、あまり馴染みのない大型の機器を用いることが多かったため、
その機器自体にスポットを当てていることがほとんどでした。
今回は、過去の導入事例を振り返りながら、機器ではなく、
導入に至るまでに自分の頭の中で考えていたことなどを中心に書いてみようと思います。

危ぶまれた在宅復帰を可能にした「段差解消機」の導入ケース

まず最初は、私が初めてホームページ上に記事を掲載した「段差解消機」の導入ケースです。(記事リンク)
このケースは、元々変形性膝関節症を患っていた95歳の女性が、
今まで長年暮らしてきた自宅で転倒してしまい、股関節を骨折してしまったことから、
在宅生活継続の危機を迎えてしまうというものでした。
元々、息子さんと母親の二人暮らしで、今回の退院の時も家に帰りたいという気持ちと
在宅で見ていきたいという息子様の強い要望で心配する親戚を説得しての退院でした。
この女性が在宅生活を続けるために、1番の課題となったのは、「玄関」です。
ちなみに、自宅の玄関はこのような形となっておりました。

玄関の上がり框、またその奥にある引き戸の所に段差があり、元々患っている変形性膝関節症、股関節の骨折、
長期入院に伴う下肢筋力の低下により、今まで何とか昇り降りができていた玄関が大きな壁となり、
立ちはだかることになったのです。
退院前の話し合いでは、自宅には戻らず施設入所の選択肢も検討される大ピンチでしたが、
移動の手段を「歩行」から「車椅子」へと切り替えて考えること、
また、出入口を「玄関」に限らず、「勝手口」にも広げて考えることが突破口となり、
「勝手口」に段差解消機を設置し、ご本人は車椅子に乗ったまま通行できる環境を作り上げることに成功しました。
設置後の写真はこちらです。

 

この「段差解消機」を設置したことで、今ではデイサービスにも通われています。
コロナ禍が落ち着いたら息子様と一緒に近所の散歩もしてみたいとも話されていました。
一度は、「自宅に帰れないかもしれない、もしかしたら施設に入所しないといけないかもしれない」
という思いで、息子様はたくさん悩まれたことと思います。
ですが、ケアマネジャーやリハビリなど専門職の方々と一緒に前向きな未来を考えることで、
息子様とご本人の「もう一度家に帰りたい」「もう一度家族と一緒に暮らしたい」という思いを
叶えることができたのではないかと思います。
このケースで、私が行ったことは単純に考えれば、
「段差解消機を設置することで外出を行うことができるようにする」ということになると思うのですが、
もっと深く考えると、もしかしたら、その外出を行うことができるようになることで、
「末永く家族と一緒に暮らすことができる」という前向きな人生の選択肢を提示できたことだったのかもしれません。

何を1番に考え環境を作り上げるか

次のケースは「H.C.R~国際福祉機器展~」に来場されて弊社のことを知り、ご相談くださった方です。(記事リンク)
ご相談の内容は、今までは、障がいのあるご子息の移乗介助をご両親でされてきたものの、
ご両親が高齢になってきたため、移乗の負担を減らして、
できる限り長く一緒に暮らせるようにしたいというものでした。
ご自宅の家屋調査を経て、3種類ほどリフトをご提案、
1つ目はリビングにベッドを移し、リビングにリフトを設置し生活環境を移す案。
2つ目はリビングと寝室を貫通して行き来できるように設置する案。
3つ目は寝室だけに設置する案。
ご家族と相談の上、1つ目の案を採用し、下記の写真のように設置を行いました。

 

生活環境を相談する中で、課題となりそうだったのは、車椅子への乗り降りを行う場所が、
リビングと寝室という2ヶ所に及ぶことでした。
これは制度的な課題で、特別な事情がない限り、リフトは2台公費で購入することはできません。
そこでご家族と相談したのが、なにを一番に考えてリフトを導入するかです。
今までの生活スタイルから、ご家族としては【寝室は寝室という考えはありましたが、
一緒に長く暮らしていくためには今までとは違った生活全体の見直しや工夫も必要だと考え、
自分自身の身体のことも考えながら無理のない生活をしていきたい】と話されていました。
そこで、今後のこと(未来)を見据え、ケアの行う際に負担の少なくて済むように、
介護ベッドをリビングに設置して生活を組み立ててゆくことになりました。
そのため、リフトの可動範囲を将来的にベッドを置くであろう位置を考慮して決め、
リフト全体の枠組みを施工しました。
リフト導入後、車いすから移乗動作をするご家族の様子を確認しながら、
ご本人・ご家族、お互いの身体を大事にし、無理なく長く一緒に暮らしていくために福祉用具を導入し、
未来を見据えた生活環境を整えることの大事さを改めて考えさせられました。

私が大切にしたいこと

過去に携わったケースを今、改めて振り返ってみて、
移乗・移動の支援を通して、「新しい人生の選択肢」を提示できることの重要性に気づきます。
今後も、支援の先にある、利用する方の人生を見据えながら取り組んでゆきたいと思います。

 

 

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この記事を書いた人
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佐藤光央
元老人保健施設介護職員 有料老人ホーム相談員として勤務 有料老人ホームに勤務中、施設に来ていた福祉用具相談員の方と話をしてこの仕事をしり、日々用具の事を学びながら、お客様と相談しながら適した用具を仕立てられるように頑張ります。
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