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福祉用具って、新しい製品のほうが良いの?
2023.10.17

みなさん、こんにちは~!
ライフサポートチームの髙木です。
まだまだ暑い日があったり、急に涼しい日があったりしますが、毎日ひたすら暑い夏から段々と秋の気配も感じられるようになってきましたね。
普段、半袖ポロシャツで活動している自分としては、夏服をどのタイミングで秋冬ものに変えてゆこうか、とても悩ましい季節でもあります。
(北海道で暮らしていた時期があったので寒さへの耐性が強く、自分の秋冬物に変えるタイミングは同僚からすると、どうもかなり遅いようです(^^;))
普段は面倒くさがりで前シーズンと同じ服を買ったりして、複数シーズン同じ服を着続けることが多いのですが、たま~に新しい服を購入し袖を通すとやっぱり新鮮味があって身が引き締まる思いになったりもします。

ちなみに、服の春夏・秋冬物のように福祉用具のレンタル品も年に2回ほど新しい製品が出てきたり、逆に無くなったりもしているんです!
そんな新旧移り変わってゆく福祉用具を巡って、現場で「やっぱり古い製品より新しい製品の方がいいの?」というお問い合わせにお答えするとしたら・・・問想定で進めてゆきたいと思います。

福祉用具は「安全性」+α のステージに

介護保険制度が2000年に始まり、もうかれこれ23年が経過しました。
当時に比べると福祉用具も、メーカーさんのたゆまぬ努力と試行錯誤により、現在は飛躍的に種類や機能が増え、利用される方々の選択肢も幅広くなりました。
ここ数年は、基本的な機能だけではなく、メーカさんのコンセプトを前面に押し出し、画期的な機能を持たせるような福祉用具も増えています。
福祉用具の開発も、成熟期に入り「安全性」は当たり前であり、そこにプラスして利用される方に付加価値として何を提供するのか?といったステージに入ってきていると感じます。
利用される方の生活に合わせて多くの福祉用具の中から「選ぶ」という仕事を主としている私たち福祉用具専門相談員が担う部分も、重要度が増してきているとも言えます。

以前にこんなことがありました。
私が、福祉用具の勉強会に参加させて頂いた時に、とある手すりのメーカーの営業さんが来られていました。
手すりは天井と床で突っ張って固定するタイプのものなんですが、実は私、前々から、「このメーカーさんの手すりって太くて掴みにくいな~」と思っていて、良い機会だったので勉強会が終わったあとに、営業さんに質問をしてみたんです。
「現場で手すりを設置したときに、手の小さな方だと掴みにくいという話になることがあるのですが、手すりを太めにしているのって何か理由があるんですか?」と。
するとメーカーの営業さん「実はそういったお問い合わせがたまにあるのですが、当社は手すりというものは簡単にずれたり、動いたりしては危険に繋がったり、利用される方の不安に繋がってしまうことを払拭したくて、しっかり固定できること、しなりなどが出ないことを大切に考えて設計しているんです。実際に手すりとして掴む部分は掴みやすい太さで作られたオプション部品を取付する形で利用される方の必要な身体の動作に応じて選択して使って欲しいと考えているんです」との回答。

今まで手すりだと思っていた部分が、実は別に手すりとして用意されているオプション部分をしっかり取付するための土台という位置づけだった、ということが福祉用具専門相談員として正確にメーカさんの開発意図を理解することができていなかったことに衝撃を受けるとともに、メーカーさんのコンセプトを知り、福祉用具専門相談員がそれをきちんと理解して利用する方々へ結び付けて提供をすることがいかに大切かを知るきっかけにもなりました。
この勉強会の後、このメーカーさんの手すりを利用されている方のお宅へモニタリング訪問をし、再度見直しを行ったところ、半数近くの方がオプション部品があった方が使いやすいとの回答があり、今でも続けて利用して下さっています。

一見、良さそうに感じても・・

ここで、タイトルのお話に戻りますね。
「福祉用具ってやっぱり新しい製品がいいの?」
新しい製品が出てくる時は、基本的には今までの製品に比べ、何かしらの特長が存在します。
例えば「歩行器」などでは、今までの機種よりも、「もっと軽い」「もっとコンパクト」「もっと旋回しやすい」などでしょうか。
どれも「歩行器」に求められそうな要素ですね。
福祉用具のカタログやチラシにも「最軽量」とか「最小」などといった目印が付いていることもあるかもしれません。
そんな目印があったらついつい「お~!1番軽いのか」「おっ!すごい小さい」と心が惹かれてしまうと思います。(プライベートの買い物では自分もその1人です(^^;))
ただ、実は福祉用具専門相談員という仕事上は、手放しで喜ぶわけにはゆかないのです。

例えば「軽い」の場合、軽くするために今までと何が違うのかを調べます。
軽量化を図るために使っている素材を変えた結果、「最大使用者体重」が100㎏⇒75㎏に変更となっていた場合、体重80㎏の方にはおすすめができない製品となってなってしまいます。
見方を変えると、重量のある歩行器だからこそ、強度が高く頑丈に作られているとも言えます。
「最小」の場合、横幅と奥行が小さくなるということですので、それだけ前後左右への振れやすさが目立つようになります。
人が足を開いて立つ、気を付けをして立つ場合、どちらが押されて踏ん張れるかというような違いだとわかりやすいでしょうか。
電車やバスで立つときは、みなさん足をやや開いて乗りませんか?
これも見方を変えると、大きくて幅の広い歩行器だからこそ、利用されている方がバランスを崩しかけても、しっかり支えてくれる安定性を高く作られているとも言えるのです。

何だかこんな書き方をすると「軽量・最小が悪だ!」みたいな印象になってしまいがちですが、決してそうではありません。
むしろ、個人的には、上記のような注意点をクリアできるのであれば、利用される方の生活が飛躍的に変わる可能性も多分に秘めていると思っています。
大事なことは、利用される方にとって「メリット」となる部分はどこなのか?
「デメリット」になりそうな部分はどこなのか?
ということを、福祉用具を作るメーカさんの業界全体の大きな視点だけではなく、もう1歩踏み込んだご提案が必要です。それは、現場で利用される方の生活に密接にかかわり提供を行う、私たち福祉用具専門相談員が持つ特性だと考えます。
さらに、私たち福祉用具専門相談員ができない身体状況の医療的な評価など、多職種の方々との協働を行うことで、生活的にも身体機能的にも、より適合度の高い福祉用具の提供ができるのではないでしょうか?

これは、私たち福祉用具専門相談員がご提案する際に、常に気を付けたいことです。

「新しい〇〇という製品が出てきたので紹介させてもらえませんか?」
⇒利用される方の自立支援を目的とした私たち福祉用具専門相談員の提案としてはちょっと残念・・・。

「新しい〇〇という製品の△△という機能が〇〇さんがいつも大変そうだった▢▢の部分の改善に繋がりそうなので、紹介させてもらえませんか?」
⇒私たち福祉用具専門相談員は、常にこのくらいのことが言えるようにしたい!

私、個人の結論としては・・

ここからは、私の個人的な結論です。
(福祉用具専門相談員により様々な考えがありますので、あしからず・・(^^;))
今、利用している福祉用具と比較し、できないことができるようになったり、できていることがもっと簡単にできるようになったりするメリットがあり、かつ新機能や変更点が今までできていたことを邪魔しないこと。
これがクリアできそうなら、新しい福祉用具の導入・他の福祉用具への変更は、検討する価値が大いにあるのではないかと思います!

福祉用具のカタログには、小さな写真や寸法など基本的なことしか記載されていないことが多いです。
カタログだけでは、なかなかわからない部分も相談できるように、私たち福祉用具専門相談員がいます。
一緒にお気に入りの福祉用具を見つけましょう!

したらね~(^o^)丿

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この記事を書いた人 高木仁志
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外食産業に15年従事し、東日本大震災を機に困っている方のお手伝いがしたいと一念発起。福祉業界に足を踏み入れる。プライベートでは、小学生と保育園児の長次男に振り回される、ラーメンが好きなおっさん。
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