皆さんこんにちは!
夏休みの宿題を最後の数日でこなしていた栗原です。
そんなわけで、『トランスファーサポートチーム営業がノーリフティングケアにかける思いを綴る』、というリレーコラムの宿題を放置していました。
三つ子の魂百までというのは本当だなぁ~と思っている今日このごろです。
・・・スミマセン、改善の努力します(;´Д`)
ただ実際、前回のノーリフティングケアとは?という記事内にも自分の思いを入れ込んでしまい、何を書こうか悩んでいました。
そこで、今回はノーリフティングケアと絡めて自分の原点を振り返ってみよう、という試みです。
マニアックの原点
『褥瘡予防のシーティング-座位環境を整えることの重要性-』
実は私は福祉心理の大学卒業なのですが、就職について若干後ろ向きな事情もあったため「とりあえず受かればどこでもいいや~」とデイサービスの職員に申し込んでいました。
二次面接で落選したのですが、試験官だった当時の社長から「福祉用具の営業って仕事が別の部署であるんだが、来ないか?」と誘われたのが私と福祉用具の出会いでした。
福祉系の大学にも関わらず、福祉用具についてほぼ無知でしたが、機械いじりは好きだったため、軽い気持ちで内定を受けて沼にハマったわけです。
新卒で勤めた会社の特色が実は『シーティング』でした。
そこは高齢者の生活や身体状況に着目し、当時はまだ珍しかった高齢者向けの車いすまで開発・販売していた変わった会社でした。
そこで学んだことが、『シーティングが褥瘡予防につながる』ということでした。
車いすとクッションを選定し、座っていても痛くなく、褥瘡が発生しないよう工夫をして座位の環境を提供する。
新卒だった私は前提知識もなかったため、フラットにこのことに取り組めたことが今では大きな財産になっているなぁと思っています。
キーワードは『重度化の予防と多職種協業』
なぜ、ノーリフティングケアの話なのにシーティングの話から入ったのか不思議に思いますよね?
それは、シーティングに欠けていたピース、それが『ノーリフティングケアマインド』だと私が考えているからです。
17年、この仕事を続けた結果、様々な方々と出会い・教えを請う機会に非常に恵まれたことが私の自慢だと思っています。
面白いことに、シーティング・ポジショニング・ノーリフティングケア・リハビリテーション・食支援など様々な領域のトップランナーの方々と話していると、アプローチが違うだけで目指しているところは一緒だと気づけたのです。
それが、『重度化を予防すること』に他なりません。
また、ゴールが一緒だからでしょうか、考え方や技法も応用がたくさんできることに気づけたんです。
『シーティングは座位姿勢で行うポジショニングです』
『ポジショニングは臥位姿勢で行うシーティングだと思えば、同じ管理方法で大丈夫ですよ』
これらは雑なくくり、説明にはなりますが、現場で運用することを考えれば決して間違いではないと考えています。
裏を返せば、どれか一つの領域だけを突き詰めても成果を出せない、ということを反省と共に学ばせてもらったのです。
その考え方がシーティングエンジニアの講習で学んだ「ポスチュアリング」という姿勢の連動性について着目する考え方でした。
シーティングに長く携わってきた結果、姿勢ケアに関する筋肉や骨、神経のことなどもすこ~~~~しだけ知ることができたとは思います。
ですが、どこまでいっても理学療法士の方々の代わりにはなれません。
また、私は福祉用具を提供するプロではありますが、使うことに関してはヘルパーやケアスタッフ、さらにはご家族の方々のほうがよほどプロです。
様々な視点・取り組み・専門性を組み合わせた『多職種協業』こそが、シーティングの質を高めることに繋がるのです。
シーティングでも多職種協業、ポジショニングでも多職種協業、食支援でも多職種協業、二次障害の予防でも多職種協業・・・。
私達の医療・介護分野ではたくさんの多職種協業が無意識・有意識で行われています。
この様々な多職種協業をシームレスに運用するためには、大きな枠組みの中で動く必要があると考えます。
それが、『ノーリフティングケアマインド』だと私は考えています。
マニアックが考える
『ノーリフティングケアマインド』とは?
私が考えるノーリフティングケアマインドは『何のためにそのケアを行っていますか?』を常に考えることだと考えています。
褥瘡に絡めたエピソードでよく例に出すのですが、ケアを行う専門職の方々へ「2時間ごとの体位変換を行っていますか?」と伺うと行っている、もしくは推奨している方に出会います。
そこで、「なぜそのケアを続けている(推奨している)のですか?」と続けるとほぼ100%、「褥瘡予防のためです」という回答になります。
ですが、ご存知でしょうか?
日本褥瘡学会が発刊している『褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版(以下ガイドライン)』では2時間ごとの体位変換が必要とはどこにも記載されていないのです。
ガイドラインのクニリカルクエスチョン(CQ)では体位変換の項目で次のように記載されています。
CQ12 高齢者に対する褥瘡の発生予防のために、体圧分散マットレスを使用した上での4時間をこえない体位変換間隔は有用か?
【推奨文】 高齢者に対する褥瘡の発生予防のために、体圧分散マットレスを使用したうえでの4時間をこえない体位変換間隔を提案する。 推奨の強さ:2B
-褥瘡予防・管理ガイドライン第5版より引用-
日本褥瘡学会が勧めていない褥瘡予防の方法・考え方が、なぜ現場では続けられているのか?
それはひとえに「今までこうだったから」「先輩からこうと習ったから」というマインドからではないでしょうか?
ちなみに、この2時間ごとというのは昔、マットレスの硬さを考慮しない上で定められた基準と聞いたことがあります。
そのため、どんな環境でも、ということではなく、現在のようにリスクがある方へ一定の機能を有するマットレスが提供されるようになったから更新されたということですね。
単純に、2時間ごとに行っていた体位変換が(すべての人ではないにしても)、4時間になる、つまりは2回が1回に減るだけで介助者はかなり楽になります。
また、体位変換される利用者の方でも、夜間に身体を動かされる機会が減るため途中で起きることなく睡眠の質を向上させることが可能になります。
その反面として考えなければならないことが、褥瘡は必ず外力が患部にかかることで発生するということです。
ただ動かせば良い、除圧すれば良いというほど単純なものではありません。
褥瘡の外力について
圧力×ズレ力×摩擦力×マイクロクライメント(×回数・時間)
この外力を減らすためにはノーリフティングケアが欠かせません。
褥瘡の創傷面を観察した結果、どのような外力によって褥瘡が発生しているのか?(引きずる・擦るような場面はないか?)
その部位の褥瘡を治癒するための姿勢ケアとして、座位・臥位、どの生活場面を改善する必要があるのか?(福祉用具の活用は適切か?)
そして、それを利用者・介助者が続けることができる対策になっているか?(必要性・手法などの共有ができているか?)
このような視点をチームで揃えるためには、施設・在宅問わずノーリフティングケアマインドを関わる全ての人の文化になることが重要なのです。
保健衛生業の分野では『昨日の常識が今日の非常識』
上のセリフは先日読んでいた医療漫画の中で用いられた何気ない一コマのセリフでしたが、印象深い一言でした。
昔、褥瘡の最新治療ではドライヤーで乾かしたり、日光で患部の天日干しがされていたそうです。
今の常識からは信じられないと思いますが、ほんの20年ほど前(もうちょっと?)の出来事だそうです。
ノーリフティングケアがまさしくこの境目の時期なんだと考えています。
上のセリフと非常に似ていて、私が好きな言葉を引用して本記事の筆を置きたいと思います。
昨日の夢は、今日の希望であり、明日の現実である。
ロバート・H・ゴダート -米国の発明家 ロケット研究者「ロケットの父」1882〜1945 –