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【総勢64名にご参加いただきました!】第3回SOEL COMMUNITYミーティングレポート

こんにちは。トランスファーサポートチームの山田です。全国的に猛暑が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さる2024年6月28日、兵庫県のスペースアルファ三宮にて、第3回SOEL COMMUNITYミーティングが開催されました。リアル会場では34名、オンラインでは30名の方にご参加いただき、盛会のうちに幕を閉じることができました。ありがとうございました。
本記事ではその内容をレポートとしてご紹介したいと思います。

ところでSOEL COMMUNITYとは?

そもそもSOEL COMMUNITYは昨年(2023年)、私たちの製品をご利用頂いている全国の施設様を結ぶ場として発足しました。まだ走り出したばかりではありますが、実際に介護に携わっておられる方同士のリアルな情報交換や共同学習により、よりよいケアの環境づくりをご支援できるような場所でありたいと思っております。過去に行われたミーティングのレポートも是非、以下リンクからご覧いただけますと嬉しいです。

★全国35施設が集った、初のSOEL COMMUNITYミーティングレポート
★第1回SOEL COMMUNITY ラウンドテーブルレポート

第3回である今回のテーマは、「ケアが変えた、自立支援、職場環境の実践例」。というのも、昨年末の第2回ミーティングでお寄せいただいたアンケートにて、今後SOEL COMMUNITYで取り上げてほしいテーマとして「介護リフト活用による自立支援」、「エビデンスの見える化による労働環境改善」、「ノーリフティングケアの運用支援」といった意見を多く頂戴したからです。こうして皆様のご発信をもとに会が発展していくことは、繋がりの場であるSOEL COMMUNITYならではだと感じております。
上記のテーマをもとに兵庫県・京都府から3施設の方より事例を発表していただきました。

【Session1】ノーリフト委員会が大活躍!腰痛に悩む職員が3年間で1/6に減りケアの質も向上

一番手を務めて下さったのは、社会福祉法人弘陵福祉会 特別養護老人ホーム六甲の館(兵庫県)施設長、溝田弘美様です。同施設は法人理念を達成するための価値観として「利用者ファーストのための職員ファースト」を掲げ、そのためにノーリフトケアや介護テクノロジーの活用に長年取り組んでおられます。背景には、厚生労働省の腰痛対策指針や、阪神淡路大震災・西日本豪雨などの災害を受け、施設として労働環境のリスク整備の必要を感じられたことがあったそうです。

そんな六甲の館のケアにおける取り組みのポイントは大きく2つあったように思います。①プロジェクトチームへの多職種参画②ビフォーアフターの可視化です。
まずノーリフトケア実践のためのプロジェクトチームとして、「ノーリフト委員会」を立ち上げました。看護師が委員長となり、ケアマネージャー・各フロアのケア職員・施設長・他の委員会メンバーが参加しました。結果として、利用者様ごとに看護師による医療的個別アセスメントが可能になり、それをケアマネージャーがケアプランに落とし込むことで日々のケア業務への反映ができるように。さらに介入前後のビフォーアフターを動画や写真で残し、自社サーバー上で共有することで、効果検討を効率的に行っています。
取り組みの成果として、腰痛アンケートで「腰痛あり」と回答した職員は、3年間で56%から9%に。また、年間の移乗介助時の皮下出血件数は4年間で46件から16件に、皮膚剥離は11件からわずか1件に減りました。

同施設は現在VRの活用やロボットによる就労支援にも積極的で、常に前向きなチャレンジを続けられています。
「介護業界には物価高騰や人材不足など不安が多い。ただ、20年後どうあるべきというヴィジョンが描かれていて、それに向かっていくことに一生懸命になっていると不安がなくなっていく。未来の介護は『遊び』のように楽しくなくてはいけない。」という溝田様の言葉は、それを象徴するようでした。

【Session2】個別入浴の実践で「利用者が入浴を笑顔で終える」を目指して

二番目にご発表いただいたのは、同じく兵庫県の社会福祉法人敬寿記念会 特別養護老人ホームふれあいの郷もくせいで、介護副主任を務められている足立裕太様。リフトを活用した入浴で、個別性の高いケアを実践できるようになった取り組みをご紹介いただきました。

同施設での環境整備前の入浴ケアは、浴室や脱衣場に人が入り乱れていて、慌ただしく事故発生リスクも高いものでした。集団での入浴のため、ご利用者様のプライバシーも守りにくかったそうです。当時施設内でノーリフティングケアにも取り組み始めていましたが、設備環境や人員配置などに全面的な介入が必要な入浴シーンに対しては、なかなか手が回らなかったとか。
そこへちょうど、設備の老朽化に伴う浴室改修の話が持ち上がったため、入浴改修委員会を立ち上げ、入浴ケアの全面的な見直しに踏み切りました。

「利用者が入浴を笑顔で終える」ことを取り組みのゴールに、①改修工事による環境整備②個別ケアへの切り替え③業務フローの見直しを行いました。
共用大浴場だった場所は4つのリフト付き個別浴室となり、1人ずつゆっくり入浴することができるように。加えて、利用者様にそれぞれ担当職員が付き、浴室への誘導から実際の入浴までマンツーマンで行うことで、個別性の高いケアが可能になりました。
結果として、入浴シーンのヒヤリハット報告数は1年間で約5割減に。職員へのアンケートでは、他職員のペースに合わせる必要がなくなったことなどから、業務上のストレスの緩和が見られたそうです。

足立様は、ミーティング参加者からの「ケアの変化で一番うれしかったことは?」という質問に対して、「入浴が利用者とゆっくり関わる時間になって、普段聞けないような話を聞いたり、鼻歌を歌っている利用者を見られたこと」と答えておられました。労働環境の整備が利用者様の満足となって表れ、介助者の喜びとなって返ってくるということは、Session1の溝田様の「利用者ファーストのための職員ファースト」にも通ずると感じました。

【Session3】見違えるような変化を叶えた、徹底したリスク管理と機器選定

最後にご登壇いただいたのは、ALSOKライフサポート株式会社 介護付き有料老人ホーム ローズライフ京都で機能訓練指導員をしておられる生島晃子様。同施設では2014年の開設当初からノーリフティングケアに取り組まれており、「取り組みをブームで終わらせず、風土として根付かせる」ために尽力されてきました。スタッフ・業務環境・利用者それぞれを対象にリスクを抽出し、リスクの芽の段階から福祉用具の活用や環境設定で対策を講じておられます。例えば職員への腰痛アンケートをもとに、一定以上の腰痛リスクが見られる方へは個別の面談で業務改善の工夫を提案しています。

生島様の発表の後半では、実際のご利用者様「Kさん」の事例をご紹介いただきました。
Kさんはパーキンソン病をお持ちの方で、入居前に胃ろうを造設、自分での寝返りや起き上がりは厳しい状態で入所されました。日常生活動作はほぼ全介助でしたが、ご本人は自分で歩きたい、食べたい、という希望をお持ちでした。
そこで、まずリフト移乗でティルトリクライニング車いすに座り、臥位ではなく座位中心の生活を目指しました。筋緊張が緩和し座位が安定してくると、頭を起こす等それまで発揮できなかった力が使えるようになってきたそうです。その後はスタンディングリフトなどを活用して、日常ケアの中で立位の機会を増やしました。結果的に、Kさんは歩行器を使ったリハビリ歩行が可能になり、食事もご自身で摂ることができるように。ミーティング参加者の中には、Kさんの変化に涙ぐむ方もおられました。

【Session4】適切な福祉用具で自立支援へつながるケアを

発表の後は、ファシリテーターとしてALSOKライフサポート株式会社ローズライフ事業部部長 眞藤英恵様をお迎えし、前Sessionでご登壇いただいたお三方をパネリストにディスカッションを行いました。「福祉用具を使ったケアによるADLの変化」をテーマとし、他の参加者の皆様からも多数ご発言をいただきました。

Session1の六甲の館ではノーリフトケアによる自立支援の効果として、平均介護度が3年で4.06から3.79へ推移したのだそう。Session2の足立様からは、トイレをリフト移乗に切り替えたご利用者様「Aさん」の事例をご紹介いただきました。トイレが気になって家に帰れなかったAさんは、気兼ねなく自宅に戻ることが出来るようになり、家で取れた柚子を施設職員にプレゼントしてくれたのだとか。また、Session3の生島様は機能訓練士の立場から、ご利用者様のADLの推移をご自身で分析したチャート図を公開。ADL低下を防ぐための早めの福祉用具活用の必要性を強調しておられました。
どのお話も大変貴重で示唆に富み、実際の介護現場で日々活躍されている皆様の血のかよったエピソードばかりでした。共通していたのは、労働環境のマネジメントがよりよいケアを作り、結果的に職員にもご利用者様にもよい結果をもたらしてくれるということだったように思います。

閉会後に参加者の皆様からお寄せいただいたアンケートでは、今回のミーティング内容に「満足」、「やや満足」というご回答が95.7%という結果となりました。
まだまだ至らない点もございますが、JCLSと関連会社一同、これからもよりよい繋がりの場をご提供できるよう邁進してまいります。このSOEL COMMUNITYにご興味をお持ちいただけましたら、是非下記リンク先のご案内をご覧いただき、ご入会いただけましたら嬉しいです。

★SOEL COMMUNITYのご案内
https://jcls.jp/soel-community/
★次回開催予定
第4回SOEL COMMUNITYミーティング
日時:2025年2月14日(金)
開催:[リアル会場]警固神社社務所ビル内「斎館」
福岡県福岡市中央区天神2-2-20
[オンライン会場]Zoomミーティング

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この記事を書いた人
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山田連
2022年3月にアップライドへ入社。新卒者のフレッシュさを武器に日々成長中!
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