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【マニアックが語る】福祉用具に関わる資格のアレコレ!【前編】
2023.1.04

こんにちは!
トランスファーサポートチームの栗原です!

皆さん、福祉用具に関わる資格といえば何が思い浮かびますか?
おそらく『福祉用具専門相談員』(以下:ふくせん)が思い浮かんだと思います。
・・・というか、それ以外知らないよっ!って声が聞こえてきます。
なので今回は、アップライドの資格コレクター栗原より、福祉用具関わる資格をご紹介していきます。
色々な方々とお話すると『福祉用具のことを勉強したいけどどこで学んだらいいの!?』という相談をよく頂きます。
そこで、今回は勉強しながら資格まで習得しちゃいましょう!、という一石二鳥を狙った話題としてご紹介していきたいと思います。
ちなみに、私が所持している福祉用具に関わる資格は以下の通りです。
・福祉用具専門相談員
・福祉住環境コーディネーター 2級
・リフトインストラクター上級
・可搬型階段昇降機安全指導員
・福祉用具プランナー
・シーティングエンジニア
・ノーリフトケアコーディネーター

色々書いていたら長い記事になってしまいましたので、今回は『前編』『後編』の2部に分けてご紹介していきます。
興味のある資格だけでも是非、ご覧頂ければ幸いです。

 

まずはおさらい!福祉用具専門相談員(通称:ふくせん)とは?

まず前提として、介護保険の運営基準ではふくせんを常勤換算で二人以上を福祉用具貸与事業所には設置すること、となっています。
つまり、ふくせんを取得すれば最低限、介護保険の仕事はできますし、なんなら複数人いる事業所ならば取得していなくても業務に従事することが可能です。
ふくせんを取得するためには全50時間、約一週間の講習を受講して試験に合格する必要があります。
受講することで福祉用具に関する法令や使い方などを学ぶことができ、ご本人・ご家族・ケアマネジャーを始めとした様々な方々からの福祉用具に関する相談を受けることができるようになります。
私が取得した16年前はたしか46時間程度だったため、昔よりもカリキュラム数が増えていますね。
・・・とはいえ、50時間程度の講習で非常に幅広く学ぶため、どうしても1つ1つの項目に対して深く理解をすることが難しくなります。
また、一度取得すると更新の必要がないようになっています。

求人サイトを見てみると、ふくせんは『取得しやすい資格』として紹介されています。
また、更新の必要がないために、取得後の研鑽は個人差が出やすい資格となっています。
ふくせんの現状は介護保険の改正のたびに議論になっているようで、主任ケアマネジャーのように貸与事業所の管理職は上位の資格を定めて設置してはどうか、という議題があがっています。
このように、資格の背骨が弱いことはふくせんの中でも実感している人が多く、看護師や理学療法士などのセラピスト、ケアマネジャーの皆さんに対して中々積極的に福祉用具の提案ができない理由の1つになっているようです。

何を隠そう、私個人の実体験として上記のような思いをずっと持っていました。
そのため、『1年に1つ資格を取得する』という目標を立てて改善を図った結果が『マニアック』と呼ばれるようになった現状です。
・・・ドウシテコウナッタ(;´Д`)
調べてみると、福祉用具に関わる資格は非常にバリエーションが豊富です。
今回は私が取得している資格を軸に、いくつかご紹介していきたいと思います。

 

福祉用具に関わる資格の内容は、名称からでは分かりにくい!

皆さん、『リフトインストラクター』と『ノーリフトケアコーディネーター』この2つの違いは分かりますか?
多分、ほとんどの人が分からないと思います。
他にも私が持っている『シーティングエンジニア』と山下さんが受講していた『シーティングコンサルタント』この2つもわかりにくいですね。
これらの資格の違いは業務内容が異なるのはもちろんなのですが、福祉用具に対する指向性が異なるのです。
具体的に言えば、福祉用具に対して『モノ(ハードウェア)』として考えるか『コト(ソフトウェア)』として考えるかというところになります。
全てではないですが、資格を『モノ(ハードウェア)』↔『コト(ソフトウェア)』と『実務』↔『マネジメント』の2軸でマッピングすると以下のような図になります。

 

注意してもらいたいのはどの要素に上下があるわけではなく、それぞれ視点・立場が異なる点であることです。
一言に『福祉用具』といっても様々な関わり方があると捉えてください。
以下の項目では、各資格について簡単にですがご紹介していきます。

 

①住宅改修に必須!福祉住環境コーディネーター

福祉住環境コーディネーターは住宅改修工事を行う際に相談・評価を行う認定資格になります。
住宅改修は取り付ける建築側と位置を考える医療職側など複数の専門職の考えが混在しており、立場や視点により様々になりがちです。
そこで、ご本人やご家族と各専門職の間に立ち、自宅内でより安全に生活するための環境とはなにか?を調整する資格となります。
手すりを取り付ける工事一つとっても、以下の視点があります。

『取り付けたい位置:見栄えや好みなどご本人側の希望』

『取り付けられる位置:強度や構造など建築側の現実』

『取り付けなければならない位置:安全性や活動性の確保などセラピスト側の目的』

これらの要素を織り交ぜながら調整をしていくためには各視点への理解が欠かせません。
また、介護保険上では2級以上を取得することで、住宅改修工事に必要な理由書の記載が認められています。
ただし、こちらは各自治体により判断が異なっており、特に東京23区では理由書はケアマネジャーが書くこと、と規定されている自治体も少なくありません。
理由書を書くための資格ではなく、複合的な視点からの提案を行い、住宅改修工事の必要性を評価できることがこの資格の本質にあると私は考えています。

 

②福祉用具を活用した課題解決!福祉用具プランナー/管理指導者

福祉用具を提供するときにふくせんがやりがちなことが、カタログを広げてどの福祉用具が良いか、をご本人やケアマネジャーと決めることです。
もちろんご本人の選択やケアマネジャーのケアプランとのすり合わせは必要です。
しかし、ご本人もケアマネジャーの方々も別に福祉用具の色や形を選びたいのではなく、どの福祉用具を選べば生活がより良くなるかを相談したいのではないでしょうか?
福祉用具プランナーはこの点を重点的に学習する資格であり、課題解決のための福祉用具を用いたプラン作成、その提供と実行に専門性があります。
例えば『車椅子が欲しい』というご本人・ケアマネジャーからの依頼があったときに「どの車椅子がいいですか?」という返答では不十分です。
「なぜ車椅子がほしいのか?」「その問題を解決する方法は車椅子が妥当なのだろうか?」「問題を具体的に解決できる車椅子はどれになるか?」
つまり、福祉用具の提供を「モノ(ハードウェア)」ではなく、「コト(ソフトウェア)」として捉えて相談援助に関わります。
もちろん、ふくせんの中でも(アップライド含め)このような視点で業務に従事されている方は数多くいらっしゃいます。
福祉用具プランナーを受講するメリットはこのような視点を個人の素質ではなく、講習を通じて習得することができる点にあると私は考えています。
また、福祉用具プランナーの上級的位置づけに福祉用具プランナー 管理指導者があります。
こちらの資格はさらなる質の向上、講師的な立場の育成などが主な目的となっておりますので、興味がある方は是非調べてみてください。
取得するために2年かかることが分かり、私は断念しました(;´Д`)

 

③地味だけど凄い重要!可搬型階段昇降機安全指導員

日本では足腰が弱くなってくると外は歩けるけれども外出できない、という一風変わった問題を抱える方が多く存在します。
これは文化的、風土的に家に入るために段差を超えねばならないことが多いことから生じる問題といえます。
つまり、「階段が昇降できないと外出できない」という問題に直面しやすいのです。

階段の問題を解決する設備として「階段昇降機」というものがあります。
こちらの課題は取付工事の必要があるため賃貸や不必要になったときの問題や費用面があがります。
そこで、介護保険では「可搬型階段昇降機」というカテゴリの福祉用具がレンタルの対象となっています。
この可搬型階段昇降機をレンタルするためには、この可搬型階段昇降機安全指導員から操作者一人ひとりが講習を受けて操作許可証の発行を受けることが必要となります。
そのため地域によっては機器の提供だけではなく、この指導員不足により提供が難しい場合も存在します。
また、この資格はすべての機器共通ではなく、各機種の仕様ごとに指導員資格を取得しなければならないため、資格所有者でも提供できない機種が存在します。
例えば私の場合、アルバジャパン社のスカラモービルという機種の「コンビ型」「車椅子型」「ポート型」の3機種に限り許可証の発行が可能である、という形になっています。
ここまで厳しい理由は唯一つ、操作を誤ったときの事故リスクが非常に大きいからです。
階段を安全に通行できるメリットが非常に大きい反面、誰が操作をするのかを評価した上で安全に操作講習を行う必要がある重要な資格になっています。

 

④メンテナンスの基本のキ!車椅子安全整備士

車椅子は福祉用具の顔といっても過言ではありません。
それくらい身近な車椅子ですが、日々使っているとどうしても消耗してきてしまい、定期的なメンテナンスを必要とします。
その時皆さんは素人に整備してほしいでしょうか?
正しい整備、機器のことを把握した人にこそ任せたいですよね?
そのための資格がこの「車椅子安全整備士」となります。
ネジを締める、パンクを直す、一つ一つは難しくなくとも意外と正しく行うことは難しく、正常がわかるからこそ異常に気づける、とは良く言ったものです。
正しい整備を受けたい、というもしくは提供したい、という場合には是非この資格に着目してみてください。

 

⑤車椅子制作のプロ!シーティングエンジニア

車椅子安全整備士がメンテナンスのプロならば、「シーティングエンジニア」は車椅子・座位保持具制作のプロになります。
元々、車椅子工房とよばれる業態の方々向けに創られた資格であり、制作に関わる知識・技術を有することを認定した資格となります。
その成り立ち上、障害領域の補装具を提供する際に使用する金属の知識やクッション材の選択、身体寸法や使用する方の病状理解などを高い専門性で求められる形になります。
いわば、座る環境を整えるシーティングに関する機器を提供するプロといえます。
実は私自身はこの資格を所持していますが、具体的にシーティングエンジニアとして従事した経験はありません。
しかし、レディメイド(既製品)を提供する介護保険レンタルの領域でも機器の開発コンセプトに着目したり、身体状況と機器適合を考えるときに『良い↔悪い』ではなく『適↔不適』で考えるべきなど、非常に学びが多い資格となっています。
ウレタンを削って座位保持具を造る演習など、福祉用具の「モノ(ハードウェア)」に対する理解度が非常に高まるため、個人的に一押しの資格です。

さて、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
長くなってしまったので一旦ここでおしまいにしようと思います。
前編は主に介護保険に関わりがあったり、福祉用具の『モノ』に関する資格を中心にご紹介する形になりました。
後編では福祉用具の『コト』に着目して活用していく資格のご紹介になります。
是非、後編もご覧頂ければ幸いです!

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この記事を書いた人 栗原俊介
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福祉用具一筋15年。福祉用具に関する発信を続けていると「マニアック」と呼ばれるようになりました。趣味のロードバイクは自分の身体でシーティングの効果を実感したいことが始めた動機です。
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