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【マニアックが語る】福祉用具に関わる資格のアレコレ! 【後編】
2023.1.12

みなさん、こんにちは!
トランスファーサポートチームの栗原です。
資格のこと色々書いてたら『長い!』と方々から言われたため、今回は二本立てです(こんなんばっかだなぁ・・・)

前編では主に介護保険に関するものや福祉用具の『モノ』としての側面に着目した資格をご紹介していきました。
今回の後編では福祉用具の『コト』の側面、つまり効果や影響に着した資格をご紹介したいと思います。
福祉用具専門相談員(以下、ふくせん)の方々以外はこれからご紹介する資格のほうが興味深いかもしれませんね。

 

⑥シーティング相談のプロ!シーティングコンサルタント

シーティングエンジニアがシーティングに対する「モノ(ハードウェア)」のプロならば、シーティングコンサルタントは「コト(ソフトウェア)」のプロになります。
この2つの資格はモノだけ、コトだけ、ということではなく両方の提供を行っています。
シーティングコンサルタントの受験資格を有するのは元々、理学療法士や作業療法士でした。
その性質上、セラピストが組織内でシーティングを実践する際のより専門的な知識・技術を習得することが目的となっています。
そして今はその裾野が広がっており、看護師、介護福祉士も取得ができるようになっており、現場でシーティングに携わる数多くの人たちに門扉が開かれるようになってきております。
しかし、何故か福祉用具専門相談員は前提資格からは外れています・・・。
そのため、私は受講資格を有していない資格となります。
実務者ではなく、シーティングのマネジメントを担う人たちのための資格といえるかもしれません。

 

⑥リフト提供のプロ!リフトインストラクター

介護リフトはよく分からない・難しそう・怖いなどの印象はありませんか?
そのような印象になりやすい介護リフトを安全・安心して現場で運用を広めるための資格が「リフトインストラクター」です。
座学と実技の2部制になっており、両方の分野で基準を満たすと初級、片方で高得点を取得すると中級、両方で上級の3段階で認定されます。
上級の合格率は私が取得した時代で50人受講した内4名が認定というなかなか難易度の高い資格です。
ちなみに、トランスファーサポートチーム4名の営業は全員が上級を取得しています。
私達のようなメーカー側だけではなく、施設内のリフト普及に関する委員会の職員が取得される場合も多く、組織内や関係先で介護リフトを普及しようと考え介護リフトのことを学びたい時に最初の選択肢に選ばれやすい資格になります。
もちろんリフトだけではなく吊り具の選定基準や様々なリフトと吊り具の組み合わせにおけるシミュレーションなど、介護リフトに関する導入のための知識・技術を高い基準で習得することができる資格となっています。

 

⑦労働環境改善!ノーリフトケアコーディネーター

今、介護の現場では離職者が多く、新しい人材がなかなか参入してこない状況にあります。
そのような状況にも関わらず、2025年問題、つまり団塊世代が後期高齢者になり介護を要する人が最も増える時代がすぐそこに差し迫っています。
そこで国は医療介護に従事する労働者の労働環境改善に対して本腰を入れ始めています。
このモデルケースとして高知県の取り組みが全国の都道府県から着目をされているのは以前にこの記事でご紹介したとおりです。
高知県では早くから県独自の取り組みとして労働環境改善のための福祉用具の導入や運用計画に対する補助や人材育成制度に取り組んだ結果、全国平均よりも労災が下がったというデータが出ています。
それが、弊社も積極的に推進しているノーリフティングケアの成果になります。
「ノーリフトケアコーディネーター」はオーストラリアから始まった「抱えあげないケア」を組織に導入することで腰痛予防を始めとした労働安全衛生マネジメントを定着していくための資格となります。
介護リフトを導入したからといって、それだけで労働環境は良くなりません。
重要なことは組織に所属するすべての人達が介護リフトを使わなければならない理由を把握し、腰痛予防や二次障害の予防のためには自分たちの働き方を変えなければなりません。
この資格は機器の使い方はもちろん身体の使い方などの技術的なことも学びます。
しかし、最も重要なことは知識・考え方をどのように伝えるか、という「プレゼンテーションスキル」を学べることです。
職員の定着、労災予防は国の後押しもあるため、組織の文化を変えるこの取り組みは今後、社会からより求められてくることになります。

 

⑧福祉用具ケアの可能性!重度化予防ケアPractitioner(実践者)

ノーリフトケアコーディネーターは腰痛予防の取り組みを始め、組織の働き方に着目します。
この取り組むはケアを受けるご本人にもメリットがあり、力任せのケアや個人差が大きいケアではなく、双方にとって安心・安全なケアを受けることができるようになります。
その結果、褥瘡や筋緊張の緩和など二次障害の予防は自立支援に自然とつながってきます。
このように、ご本人の重度化を予防するケアの実践にもつながることがノーリフティングケアのもう一つの側面になります。
この「重度化予防ケアPractitioner(実践者)」という資格はこの側面に着目して令和4年10月に発足した「日本重度化予防ケア推進協会」が認定する新しい資格となります。
ノーリフティングケアだけではなく、シーティングやポジショニングなどご本人を取り巻く福祉用具ケアは様々な領域に広がります。
すでに実践されている法人の事例・経験を基に、これら単独で提供されがちなケアの技法や考え方を整理・体系化して体得できる資格となるそうです。
「1年に1つ資格を取得する」という個人目標を今年こそ久しぶりに達成するために、私が取得しにいこうと考えている資格になります。
取得後、どんな内容だったかは改めて皆さんにお伝えしていきたいと思っています!

 

⑨専門家ではないけれど関係大!理学療法士/作業療法士/言語聴覚士

そして、忘れてはならない資格が「理学療法士」や「作業療法士」、「言語聴覚士」といったセラピストの方々です。
皆さんに知ってほしいことはこれらの資格の方々は学校に通っているときには基本的に「福祉用具のことは学ぶ機会がない」ということです。
中には変わり者(?)の講師がいらっしゃる学校だと熱心に提供されているところもありますが、それでもあくまで一部になります。
ですが、周りを見渡してみると、福祉用具に困ると皆さんはふくせん以外だと誰に相談しますか?
そうです、セラピストの方々ですよね?
下手をすると、福祉用具の専門家であるふくせんがセラピストの方々にお伺いをたてるような状況も珍しくありません。
そのため彼らは現場に出てから必死に福祉用具を活用するケアを学ぶそうです。
今でも忘れられない理学療法士の方の言葉に
「学校では習わなかったのに、1年目のときに初めていった現地調査で『先生、どこに手すりをつければいいですか!?』とケアマネジャー・ふくせんの方に聞かれてすごく困った・・・」
というものがあります。
平成29年、診療報酬の中にシーティングの実施が入りました。
それを受けてから理学療法士のカリキュラムの中にシーティングが入りだしたそうです。
それは何故でしょうか?
効果的なリハビリテーションを実施するために、福祉用具を活用した環境設定が不可欠だからです。
セラピストの方々の専門性はリハビリテーションの領域にこそあります。
あくまでその実践のために福祉用具を必要としている職種だということを私達は忘れてはいけません。

 

『出来ることを増やすことで、出来ないことがより明確になり多職種と連携・協業する必要性が見えてくる』

最後になりますが、実は私も一時、作業療法士の資格を取りに行こうか悩んだ時期がありました。
ですが、私が作業療法士を取得してしまうと『福祉用具の専門家の意見』ではなく、『作業療法士の意見』になってしまうな、と思いそれ以外の資格を取りに行こうと決めたことがあります。
一人ですべての領域をできるようになると、結果として視野が狭くなったり連携が上手くいかなくなると私は考えています。
一人ひとりが自らの専門性を高め、様々な視点・知識・技術をもって多職種連携が本当の意味で進むといいなぁと個人的には強く望んでいます。

 

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この記事を書いた人 栗原俊介
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福祉用具一筋15年。福祉用具に関する発信を続けていると「マニアック」と呼ばれるようになりました。趣味のロードバイクは自分の身体でシーティングの効果を実感したいことが始めた動機です。
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