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【元介護士が伝えます!】天井走行式、床走行式 どのリフトを選べばいい?
2023.3.27

みなさん、こんにちは。
トランスファーサポートチームの山下です。

4月に続き、5月も春とは思えない暖かい日があったと思えば、急に涼しくなったり、寒暖差の大きい日々が続いています。
皆様、体調は大丈夫でしょうか。
汗っかきだけど寒がりの私は今日はどのような服装が最適か、毎日悩みながら出勤しています。

さて、アップライドマガジンをホームページに掲載しだして早2年が経ちました。
今更ですが、気付けば私が執筆しているアップライドマガジンのタイトルには「元介護士が伝えます!」というフレーズが多かったので、シリーズ物にしてしまいました!

今回の「【元介護士が伝えます!】シリーズ」Vo.7では「リフトを選ぶコツ」について、事例も紹介しながらお伝えしたいと思います。

 

介護リフトを選ぶ前に知っておきたい「基本の3種類」

介護リフトの導入を検討しているご施設や個人宅の方はまずはこの悩みに直面するかと思います。
介護リフトは大きく下記の3種類に分けられます。

①天井走行式リフト
・天井や天井付近にあるレール内に取り付けられたリフト本体でご利用者を昇降し、移乗するタイプ。
・リフト本体が動ける範囲は可動レール内に限られ、基本的には設置している場所のみで使用する。
・空間を使用するため、介助スペースは確保しやすい。
・また、吊り上げられている介護者の体重等は操作性に影響しにくい。
②床走行式リフト
・リフト本体にキャスターがついており、床面を自由に動かすことが出来るタイプ。
・居室等、他の場所に移動ができ、1台で多様な場面に対応できる。
・車椅子やベッドに着座する際、床走行式リフトを動かさないといけないため、移動させるためのスペースが必要となる。
・また、床材や吊り上げられている介護者の体重等が操作性に影響しやすい。
③ベッド固定式リフト
・ベッドの重みを活用し、ベッド付近にリフト本体や支柱を立てて固定するタイプ。
・他の機種に比べ、省スペースでのリフトの設置や移乗が可能。
・リフト本体が動ける範囲はベッド周りのみとなるため、限られたスペースでの移乗となってしまう。

 

天井走行式リフトは「線移動」が「面移動」かも要チェック

天井走行式リフトについては、レールの仕様と設置方法がそれぞれ2種類にわかれます。

【レールの仕様】
①線移動(1本レール)
動くレール1本(可動レール)のみで、設置されている天井走行式リフト。
リフトの可動範囲は、下図のようにレールに合わせた線状の往復のみとなります。
また、ベッドや車椅子は動線上に配置することとなり、動きは限られるがベッドや車椅子等の配置は明確にしやすい。
しかし、リフトの動線に合わせてベッドも含めた家具の配置が必要。

▲天井から見たイメージ
②面移動(XYレール)
可動レールが左右にスライドできるようにして、設置されている天井走行式リフト。
リフト本体は可動レール内、可動レールは固定レール内が可動範囲となり、下記の図のように広い範囲でリフトを使った移乗が可能。
広い範囲でリフトが使えるので、リフトに合わせて家具等の配置を決めるのではなく、家具等の配置に合わせてご利用者を移動することが出来る。つまり、自由度の高いリフト。

▲天井から見たイメージ

【設置方法】
①工事取付
天井裏や壁にレールを固定する部品を工事で取り付けて、リフトを設置する方法。
②据え置き
レールを支えるための支柱を立てて、リフトを設置する方法。
支柱は線移動の場合は2本、面移動の場合は4本となることが多い。

このように介護リフトには様々な種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
また、金額もそれぞれで異なります。
では、どのようにして選べばよいのでしょうか?

 

リフトを使って「何がしたいのか」で使うリフトの種類を考える!

初めての介護リフト導入を検討している方に多いのが、まず「何を買うか」ということを考えてしまうケースです。
予算等の問題により、限られた範囲での検討となってしまうのは致し方ないかもしれませんが、最初の段階で必ず考えるべきことがあります。
それは…
目的を明確にする!
ということです。

具体的に言うと
「介護リフトを使って、どこでどのようなケアをしたいのか」

「何の介助をするために介護リフトを使いたいのか」
ということを、まずは考えていく必要があります。
そうすることでスムーズな介護リフトの機種選定や導入に進めるかと思います。

ここで私が関わらせていただき、一緒にリフトの選定等に携わったことで最善なリフトの導入が出来た事例を紹介したいと思います。

 

何のための移乗介助?

神奈川県海老名市にある、障害者支援施設 星谷学園(社会福祉法人 星谷会)ではご利用者の加齢による体型の変化により、移乗時の介助負担がかなり重くなっていました。
そのため、介護スタッフの負担軽減を目的とし、介護リフトの導入を検討していました。
星谷学園では男性が入居している階の浴室にはリフトが設置されていましたが、その他の場所には介護リフトも含め、移乗機器は入っておらず、状況によっては2名で介助する等、人の手で抱えて移乗介助をしていたそうです。
H.C.R.(国際福祉機器展)にも来場され、当初は「多くの居室で使えるように」と床走行式リフトを検討されており、SOEL MXをデモしたいというご希望がありました。

実際にSOEL MXを10日間ほどデモを行った後、感想を聞いたら女性スタッフからこんな感想をいただきました。
「リフトを使うことで、抱えずに移乗が出来ました。腰もだいぶ楽でした。けど、必要なご利用者にはトイレでも使いたくて…。居室にポータブルトイレを置いていて、車椅子からベッドに移して、ベッド上で排尿等の排泄を確認して、排泄がなかったらポータブルトイレに座っていただくんです。そうなるとリフトを何回も動かさないといけなくて、ちょっと取り回ししづらいな。と思いました。」と。

実はデモで訪問した際、操作手順等の説明は男性のご利用者が入居している階で行っており、女性側の移乗環境については居室の大きさを把握していたのみで、移乗介助の目的等は伺えていませんでした。
私はこの言葉を聞き、改めて女性側の階の対象者の移乗について改めて確認しました。

 

「移乗介助の目的」で変わったリフトの選定

実際に介助する居室は以下の写真となります。

このような環境で、ベッド⇔車椅子だけでなくベッド⇔ポータブルトイレ等への移乗を同時に複数回行っており、そのどちらにも介護リフトを使うニーズがありました。
環境関係なく、排泄介助に対して床走行式リフトを使うことは特に大きな問題はありません。
ですが、写真のような環境で2つの目的のために床走行式リフトを使うとなると、本体の向きや位置を何度も動かすことになり、介助者への負担が大きくなってしまいます。
では、どうすれば良いのか。解決のために私が考えたこと、それは「スムーズな動線を確保する」でした。
介護リフトを使って移乗先にご利用者を動かしていくのではなく、移乗先に合わせて介護リフトを設置することで無駄や無理のない範囲で動線が確保できるようになるのではないかと考えました。
これを解決するのは「天井走行式リフト」で「線移動」できるもの、つまりCX-Lineです。

私は天井走行式リフトについて説明し、後日デモを行いました。
デモ後に感想を伺うと…
「とても介助がしやすくなりました!同じ介護リフトでも機種によってここまで変わるんですね!」
「正直天井走行式リフトの虜になってしまいました…」
等、床走行式リフトの時とは異なった前向きな感想をいただきました。

移乗の目的を果たすために最適な介護リフトを見出せたことで、施設のご担当者、介護スタッフ共に導入に向けて大きな一歩が踏み出せたようでした。

その後、使う場所・介助に応じた機器の種類や台数等の検討を経て、天井走行式リフトと床走行式リフトそれぞれ導入することを決めました。
実際に天井走行式リフトを設置した様子は以下の写真となります。(先ほどと同じ居室です)
タンス等の家具の配置も動線を考慮した位置に移動し、ベッドや車椅子、ポータブルトイレへの移乗が一直線で行えるようになりました。

「高い」「安い」ではなく、「適合」「不適合」で考える!

こちらの施設では、弊社だけでなく、他メーカーの介護リフトのデモも行っていました。
ですが、当初は床走行式リフトでの導入で検討していたため、弊社以外でのデモは全て床走行式リフトのみだったそうです。
そんな中、天井走行式リフトも含めたデモも行えたことで、移乗の目的に合わせた介護リフトを決められたようで、納品に向けた打ち合わせを行った際にこのようなお言葉をいただきました。

「現場が疲弊しているんです。それは介助がきついからだけではなく、リフトの良さを知ってしまったから。それがない環境に一旦戻ったので、皆さんかなり疲れています。リフトが早く欲しいと嘆いているんです。」
「実際、費用面では天井走行式リフトの方が高いです。でも、現場の介護スタッフもリフトを使うことにすごく前向きになったので、ぜひ天井走行式リフトを導入したいです。そのために私は稟議をなんとか通せるよう掛け合います。」

「現場が疲弊している」という言葉をまず聞いた時、私は焦りました。ですが、その続きを聞いた時、私は関わらせてもらえてよかったと思いました。

床走行式リフトも含め、介護リフトを使うことで抱える介助をする必要はなくなり、腰への負担は軽減します。
ですが、移乗する環境や目的に適した機器を選ばないと、たとえ腰は楽になっても使い勝手等で介護する側・される側の双方に余計な負担をかけてしまいかねません。

「介護リフトを使って、どこでどのようなケアをしたいのか」
「何の介助をするために介護リフトを使いたいのか」

目的を明確にすることで介護スタッフにとって最適な介護リフトを選べるようになるのではと思います。

 

もしお悩みなら是非「サザンカ」を!

弊社では介護リフトの導入に向けて、介護リフトが3台×3か月試せるサービス「サザンカ」を行っています。
「サザンカ」は介護リフトを使ったケアでの介護現場の変化が体感できるだけでなく、最適な機器の選定にも繋げることができます。
機器の選定には私たちも携わらせていただくので、より皆様の介護現場に適した介護リフトの運用や機器選定が出来るのではないかと思います。
もし、介護リフトの選定や導入にお悩みであれば、ご気軽に弊社までお問い合わせしていただければと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次はVol.8ですね。次の話題は何にしましょうか。
もし話題にして欲しい内容があったら、私に会った際に声を掛けていただけると嬉しいです。

それでは!

 

※過去の「【元介護士が伝えます!】シリーズ」は以下からご覧になれます。ぜひ読んで下さい!
Vo.1→【元介護士が伝えます!】ノーリフティングケアの普及に大切なこと
Vo.2→【元介護士が伝えます!】介護リフトはなぜ普及しづらいのか
Vo.3→【元介護士が伝えます!】実例紹介/浴室リフト導入改修で、現場の空気まで変わった特養のお話
Vo.4→【元介護士が伝えます!】介護施設の方、必見!失敗しない介護リフトのトライアルサービス「サザンカ」
Vo.5→【元介護士が伝えます!】導入事例/遂にSOELシリーズが施設にやってきた!CX-Line編
Vo.6→【元介護士が伝えます!】導入事例/遂にSOELシリーズが施設にやってきた! MX編

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この記事を書いた人 山下奨
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元介護士。最初は「No!リフト」派だったのが、次第にリフトの魅力に引き込まれ、「リフトを世の中に広めたい」と一念発起し、営業職へと転職。
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